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埠頭のクレーン

 キックボードはそれなりに流行った。

 主に村から出ない、農地にも砂浜にも行かない者には使い勝手のいい道具として重宝されている。


 しかし砂浜では全く使えないし、農地でも使い難さから敬遠するものが多い。

 人口の半分以上が農地と海を仕事場にしているため、100台ほどでキックボードの生産は終了した。



 キックボードの技術は台車などに転用され、村の中で重い荷物――主に解体前の肉なんだが――を運ぶのに使われている。

 それと、海の連中から砂浜まで石の道を作ってほしいという嘆願が届いた。荷物の運搬なら自分たちが一番苦労しているので、台車が使用できる環境を整えて欲しいという内容だ。


 海からは海藻を中心に、多くの海産物を運び込んでいる。

 彼らの主張は間違っておらず、短期的に見れば収穫直後の農地が一番大変だろうが、普段から荷物の運搬頻度が高いのは海の方だろう。


 つまり、港を作ればいいんだよな?

 荷物運搬の話だし、これはコンテナとクレーンも作らないといけないな。





 石の道、港を海の上まで作るのは簡単だ。

 難しかったのはそこからである。


 今までは木製の桟橋を船着き場として使っていたのだが、それを石製の埠頭(ふとう)に変えた。埠頭の下を潰してしまうが、環境破壊には目を瞑ろう。

 クレーンを作るため、埠頭の幅は広めにとってある。だいたい20mぐらいでどこの大型船舶を止める気だと言われかねないレベルである。


 クレーンは木で作る。

 縦横10m高さ5mの塔の枠を組み、天井に回転可能な円盤を取り付ける。円盤の上からアームを出し、アーム先端から海まで届くフック付きロープを垂らした。

 ロープはクレーンの足元で巻き取り可能にして、天井の円盤はクレーンの中に潜れば回転させることができるようにしてある。

 天井を回転させるとロープがねじれてしまうが、その程度は耐えてくれると思う。


 クレーンが終われば次はコンテナである。

 コンテナは木製の箱なのだが、クレーンに対応した形にした。コンテナの四隅にアイボルトを撃ち込み、そこにベルトを通してクレーンのフックにひっかけられるようにしたのだ。

 アイボルトは輪っかの付いたネジの事で、「工業製品の吊り上げと言えばこれ」という俺の固定観念から来たものだ。コンテナに穴を開けておけばよかったと後から気が付いたが、終わった事である。


 あとは船の上にコンテナを乗せ、クレーンで埠頭まで吊り上げられるかを試して完成だ。



 後日、クレーンにロック機能を付けていなかった事に気が付いたのは内緒だ。

 ただロープを巻き取り可能になっただけだと、巻き取りドラムから手を離すと自重でコンテナを落としてしまうのである。

 こっそり直すわけにもいかないので、視察をして、改善案としてロック用の機能を追加しておいた。


 ちょっとしたミスではあるが、どんな技術も失敗の上に積み重ねて良くなっていくのだから反省するだけにとどめておこう。

 反省はしているんだよ?

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