おにく
急停止の反動で空を飛ぶ馬鹿が続発。
トロッコの正面にバンパーを付け、止まるのに失敗したらバンパーが壁にぶつかって止まるようにしていたんだけど。狙ってそれをやる馬鹿、速度の上限を追い求める馬鹿が居た為にバンパーは再び壁にぶつかった。
結果、バンパーが壊れるというアクシデント発生。
犯人は「ああやって止める物だと思ったっす」と意味不明な事を供述しており、現在は逆さ吊りの刑に処されている。近くに墨と筆が置いてあるので、自由に落書きしましょう。
まずは俺が手本を見せねばな。基本は額に「肉」「骨」「中」「にく」だ。戦犯4人のうち1人に頬にグルグル渦巻き、鼻の下にちょび髭、他にも容赦なく書き込んでいく。
さあみんな、これを見本に頑張り給え。
公開処刑が終われば次は修理だ。バンパーを交換しておく。
バンパーはへこむ事で衝撃を吸収する安全装置だ。これが無ければトロッコ本体が砕けていた可能性が高い。
新しいものに交換し、レールの中央に「ここより先、加速禁止」の看板を用意する。奴らは文字が読めないので大きな×を書き込んだ。あとは説明会を開いて真ん中から先は加速しないように言い含めておいた。教材は逆さ吊りのうえ落書きされた馬鹿どもである。ああなりたくなければ規則を守る様にと言っておいた。守ったかどうかの判断はバンパーを見て考える。誤魔化せると思うなよ。
一定区間に限り機械的に加速できない機構を組み込めればいいんだろうけど、それを作るのは面倒だ。やる気は無い。
具体的には、左右のレールの真ん中にもう一本レールを置き、それの有無で加速する・加速しないを区分けするやり方だ。真ん中のレールで車輪を押し上げている時だけギアとチェーンがかみ合い加速するように組めばいいんだけど。部品点数が多くなりすぎるし作業は細かいしで手間なんだよな。ミスは作業者教育で済ませられるんだし、それぐらい手抜きしてもいいんじゃないだろうか。
仕事が終われば飯である。
処刑中だった馬鹿4人を解放し、二度としない事を条件に許してやる。やったら飯抜きな。酷い目に遭って学習したのか、4人は無言で何度も頷いている。
穀物消費を抑えるためにも、俺達の飯は肉メインだ。みんなで分厚い肉のステーキを食べる。
味付けは塩だけで少々物足りないが、それでもなかなか美味い肉が食べられるようになっている。家畜化したことで猪の餌が固定化され、肉の品質が一定になったのだ。まだ完全に獣臭さが抜けたわけではないが、野生の物よりは確実に上等な肉である。美味い。
順調でもあと3年は食べられないだろうけど、いずれ水牛の肉も食べられるようになるはずだ。
繁殖させ、数がいるから大丈夫だと言えるまで水牛を潰してはいけない。増やさない事には食べる事すらできない。乳も出ないし、完全に様子見だ。
肉と言えば鶏、豚、牛である。一応、肉が揃った。兎や羊は食肉にするのに馴染みが無いので何をするにしても頑張るのはちょっとだけ後の事。まずは美味しい食生活を。
鶏はいいとして、豚は猪、牛は水牛である。ここから品種改良をするとして、望む品質になるのは数世代先の話。
鶏はもっと卵を産むように。
猪は……落ち着きを持つように。
牛は乳の出が良くなるように。
それぞれ、まず一つ目の品種改良を続けよう。




