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もう一つの水回り

 風呂。

 それは魂の“癒し”である。

 良い入浴は日々の疲れを溶かし、明日への活力を生む。


 同時に公衆浴場というのは、社交場でもある。

 「裸の付き合い」という言葉があるが、互いに全裸で向き合うというのは強い結束を生む。

 衣服と身分で飾らず、対等なその身一つで向き合う事で人は真摯に語り合えるのだ。そこには確かな“絆”が結ばれる。



 思えば俺は人の結束を、日々の癒しを軽視していたのかもしれない。


 美食の追求は、確かに人に喜びを与える。同じ釜の飯を食う、それも一つの絆である。

 だがそこに風呂という癒しと絆が加わることで、より大きな力を得る事が出来るのではないか。そんな風に思うのだ。


 みんなで風呂に入ってから、明らかに向上した作業効率が、みんなの笑顔が、交わされる声が。そんな事を伝えてくれる。



 俺、ちょっとだけ反省。

 美食の道を邁進するためには、他を犠牲にするのではなく、他も礎だと思い積み重ねなければいけないのだ。

 人はパンのみにて生きるに非ず。パンと風呂にて生きるのだ。

 俺、大人になってそんな事を学んだよ。





 好評だった風呂は定期的に開催するとして、今度はトイレの整備だ。

 せっかく綺麗になったんだ。臭くならない為にも頑張ろう。



 トイレの整備が必要になったのは、人口増加に伴う一般的な行事だ。


 ゲームで都市開発をやる時も、上水道と下水道、これらが最大人口の壁を破るキーワードになっていた。安定した飲み水確保の手段と、排せつ物の処理。この辺が雑だと人口が増えないよという、ゲーム会社からのメッセージだ。


 これについては、俺も異論がない。

 だって、村が臭くなったし。



 トイレが無いなら、そこら辺ですればいいじゃない。

 今の村はこんな感じだ。

 だからトイレを作り、排せつ物を安定して処理するようにしたい。


 農地があるのだから、肥溜めを作って肥料に、というのは素人考えだ。俺はやらない。糞尿というのは厄介で、適切な処理ができなければ疫病の原因になる。

 よって、海が近いのだし、母なる海に処分してもらおうと思う。100人を超えたとはいえ、200に満たない村民の排泄物だ。キャパシティオーバーになる事は無いと思う。


 という訳で、先ず水路Aと小さい池を作ります。

 近くに風車小屋を建てて、池から海水を汲み上げられるようにします。

 くみ上げた海水を次の水路Bに放水し、その海水が村の中を一周するようにします。最終的に水路Bは海に還るようにしてあります。

 あとは水路Bの上に座式便器を取り付けて、完成。

 なお、この水路Bには基本的に蓋をしてあります。具体的にはトイレ以降に。臭い対策なんだから当然だな。


 一回風車で海水をくみ上げるのは、水が流れるための位置エネルギーが欲しいから。単純に海水を引いただけじゃ、水が循環しないのだ。

 風車の定期的なメンテナンスは必要だけど、これなら最低限の労力で汚水処理ができるので、このような手段を取った。水量が安定しないのが難点だけど、そこは最悪、俺が頑張れば済むし。



 この水流トイレは古代ローマにあった物を参考にした。

 トイレはこの世界だと王都を始めとした一部の大都市にしかない文明的なものだが、村のみんなも知っているのであれば使う。というか喜ばれた。


 ここが中世ヨーロッパ的世界じゃなくて良かったよ。古代の方が衛生的なんだから。

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