王都の新年祭(婚約者)
タダより高い物はない。
公爵の爺さんは俺にそれを教えてくれた相手でもある。あと「厄介なのは無能な味方だけじゃない、有能な味方こそ恐れよ」だったか。
おかげで俺はこの爺さんがとても苦手だ。
悪人ではなく、無能ではなく、俺に敵意を持たず、常識人。よって排除するべき敵ではない。
基本は善人で、為政者として有能で、俺に協力的で、同じ国の貴族。突き放し周囲から遠ざけるのも難しい。
俺に協力的だけど有能さできっちり自分の利益を確保するし、その利益を民草の為に還元しようという誠実さを持っている。
関われば俺にも利益があると分かっているけど、手のひらの上で転がされている感覚がどうにも好きになれない。この爺さん、手の上で転がしている事を隠そうと思えば隠せるのに隠そうとせず、俺がそんな感想を抱く所まで分かって、その上で孫に接するかのように振る舞うんだぞ。
この爺さん、どうにも苦手だ。
「来年の新年祭では、本当に身内になるな。実に楽しみ」
爺さんは髭に手を当て、婚約者の話題で周囲と盛り上がっている。俺としてはひも付きにされる事もあり、頬のはしが引き攣るのを押さえられない。
それ、俺の意思を考慮してないのに気が付いているよな? 俺が喜ばないのを知ってて婚約者を斡旋したよな?
「陛下にお願い申し出た甲斐があったというものだ。
私の孫だけでは問題が出るから、他の娘も探してきたぞ。いや、同じことを考えておる者が他にも居ってな。勝ち残るのには苦労させられたわ」
オマエが主犯か!!
いや、他の貴族からの防波堤になったと言っているのか? 身内になれば戦争を楽に勝てるだろうと。
「孫は妻の若い頃とうり二つで才色兼備。私の自慢なのだよ。
いずれは陛下の所にと考えていたが、年が近い方が良いだろうとね。
末永く、可愛がってくれ」
爺さんは言いたいことを一通り言い終えると、取り巻きを連れて去っていった。こういった場では俺があまり喋らないのを分かっての気遣いで、それが出来るならなぜ婚約者を宛がったのかと問い詰めてやりたい。
思わぬところで婚約者騒動の犯人が分かったが、だからと言って俺にできる事は何もない。
爺さんは俺の為に防波堤になってくれたと言っているが、そもそもそんな騒ぎになった原因は爺さんの要請で戦争に参加したことに起因するわけだ。
爺さんに心から感謝する必要はどこにも無いな、うん。




