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子狼

 当たり前だが、生き物を飼うというのは大変だ。

 畜産センターの担当を一人借りて、母狼ともども子狼の世話をしている。


 躾けのために早い段階で狼には順位付けをと、俺が最上位者として認識されるように意識している。



 まず、食事の順番。

 上位者から食事をするのが当然である。母狼の前で食事を摂り、その後、俺の手から母狼に餌を与える。

 生きる事は食べる事だ。満足な食事を与える存在にオオカミはかしずくのである。


 強さを理解させる。

 俺は魔法使いという事で、基本は遠距離攻撃をメインにしている。しかし、別に近距離戦闘が出来ないわけではない。防御系の魔法、体の表面をバリア的な何かで覆い身を守る事が出来るのはもちろん、≪身体能力強化≫を使えば猪をなぐり殺すことも可能だ。

 目の前で大きな猪と戦い、強さを見せつける。そして血の滴る肉を食べ(た振りをし)てから母狼に与えると、母狼は俺により強くリーダー性を感じるのだ。たぶん。


 住環境も気を使っている。

 狼の子育ては洞窟で行われる。子狼の目が開くまでは強い光を避けるため、暗い場所を好むのだ。捕まえた時も小さな穴の中にいたからな。逃げられる心配も無く、とても楽だった。

 だから村の中に穴を掘り、普段はそこに住まわせている。穴には麦藁を敷き、その上に麻布を被せて寝床とした。子狼はほとんどの時間を寝ていて、起きているのは母乳を求めている時だけ。母狼を連れ出すのも子狼が寝ている時にしている。


 あとは子狼のブラッシングもしている。

 狼は群れで子育てする習慣があり、それぐらいしないと仲間と認識されない可能性がある。住環境や餌だけでもいいかもしれないけど、ボディタッチに慣れさせる意味もあり、ブラッシングをしている。

 さすがに舐めて毛繕いまではしないぞ。手でそっと撫でるだけだ。

 最初のうちは逃げるように身をよじっていた子狼だが、慣れてくると逆に身を寄せるように動く。

 懐く小動物ってかわいいよね!


 なお、毛皮は濃い茶色。上の方が黒ずんでいて、足元にいくにしたがって白っぽくなる。あと、腹も白い。





 狼は人間の5倍ぐらいの速度で成長する。

 生まれて何日目だったのかは知らないが、攫ってきてから10日も経たないうちに離乳食を求める事になる。


 一般的な肉食動物の例に倣い、俺がよく噛み、ぐちゃぐちゃになった生肉を与えている。

 俺が皿の上に肉を吐き出すと、子狼はみんな皿に群がりがつがつと肉を食む。食べ終わると俺の方に寄って来て撫でて欲しいと順番待ち。兄弟間の序列もあるようで、毎回同じ順番で並ぶ。

 撫でると目を閉じて横になる。きっと身内認定されているからだろう。


 この段階でリーノミを連れてきて子狼に慣れさせている。

 念のために怪我をしないように魔法で保護しているが、そもそも母狼や子狼は脅威となる動物以外には甘い性格をしていたようだ。狼側から何かしようとする事は無い。

 逆にリーノミの方がオオカミに興奮してしまい、うるさくしている。騒ぐ赤ちゃん、それでも悠然としている狼って凄いと思う。



 なんか狼も赤ちゃんも俺が主導で世話をしているけど、それは気にすべきことじゃないはずだ。

 俺の思いは横に置き、こうして狼と赤ちゃんの共生が始めるのだった。

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