子供が生まれたら――
子供が産まれた記念に、俺は狼の子供というか赤ちゃんを入手した。
もちろんこれにはちゃんとした理由がある。
犬を飼う、代用である。
犬に関するイギリスの諺にこんなのがある。
――子供が生まれたら犬を飼いなさい――
子供が生まれたら犬を飼いなさい。
子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。
子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。
子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。
そして子供が青年になった時、
自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう。
――犬の十戒――
1 私の寿命は、10年。長ければ15年。 何があっても最後まで、あなたのそばにおいてもらえますか。 私を飼う前に、どうかそのことをよく考えてください。
2 あなたが私に望んでいることを、ちゃんと分かるようになるまで 少し時間をください。
3 私を信頼して下さい・・・それが何より嬉しいのです。
4 私のことをずっと叱り続けたり、罰として閉じ込めたりしないで下さい。 あなたには仕事や楽しみもあるし、友達もいるけれど 私には・・・あなたしかいないのです。
5 時には私に話しかけて下さい。 たとえ、あなたの話す言葉はわからなくても、 あなたの声を聞けば、私に何を言ってくれているのか、分かるのです。
6 私のことをいつもどんな風に扱っているか、考えてみてください。 あなたがしてくれたことを、私は決して忘れません。
7 私を叩く前に思い出して下さい。 私には、あなたの手の骨など簡単に噛み砕ける歯があるけれど、 決してあなたを噛まないようにしているということを。
8 言うことをきかないとか、手におえないとか、怠け者だと叱る前に そうさせてしまった原因が無かったか、思い起こしてください。 ちゃんとした食事をさせてもらっていたでしょうか 太陽が照りつけている中に、長い間放っておかれたことはなかったでしょうか 老いた私の心臓が弱っているせいで、動けないのかもしれません。
9 私が年老いても、どうか世話をして下さい。 私達はお互いに、同じように歳をとるのです。
10 最期のお別れの時には、どうか私のそばにいてください。 「つらくて見ていられない」とか「立ち会いたくない」とか そんなこと、言わないでほしい。 あなたがそばにいてくれるなら、 私は、どんなことも安らかに受け入れます。そして、どうぞ忘れないで。 私がいつまでも あなたを愛していることを。
どちらも人と犬の関係を説いた大切な言葉である。
特に「子供が生まれたら犬を飼いなさい」は知っている人も多いと思う。
犬は人間最古のパートナーである。
そして、人間を守る守護者でもある。
犬が人に寄り添うのは古くからの流れであり、この世界でもそれは変わらない。
狩猟や牧畜を生業とする者と貴族など一部の裕福な者しか飼う事が出来ないが、それでも犬のいる生活というのは人に大きなプラスの影響を与える。
アニマルセラピー的な物も期待できるし、将来的には畜産用の牧羊犬なども欲しい所だ。
とにかく、犬は必要であり、子供が生まれた今はいい機会なのだ。
そんなわけで、赤ちゃん6頭を入手した。
本来、狼は冬に子作りをして春に産むのが一般的なので、冬の前に生まれたこの子らはとても貴重な赤ちゃんである。まだ乳離れしていないので母親ごと連れてきた。
ここから俺と狼の戦いが繰り広げられることになるのだった。




