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名付けと洗礼

 命名権争奪戦に勝ったのは農業チームの男だ。レスリング一本勝負でぶちかましによる一撃のみで勝利。農業リーダーを下しての勝利だったので、後々に響かない事を祈る。



 命名、リーノミ。


 こっちの神話にある大樹の名前だそうだ。

 細かいことを言うと、「リーノミ=グラメ=ウィル=グラメ」となる。

 これは「個人名=氏族(名字)=添え名=住所」の順に並べただけだ。


 正式には「個人名=氏族=父親の名前=祖父の名前=出身地=ニックネーム=添え名=住所」に並べるんだけど。氏族は村の名前でいいとして、父や祖父の名前は分からないので分かる範囲だけ書き記してこうなったのだ。あと、ニックネームは同じ名前の奴がいた時に付ける名前で、今回は被る奴がいないので付かなかった。

 俺の子の扱いにして「リーノミ=ロドリゲス=セガール=アンソニー=グラメ=ウィル=グラメ」でもいいんだけど。面倒なので、パス。

 5歳になったら父親を選ばせて、その名を継がせればいいと思っている。ウチの村に働かない駄目な男はいないので、誰が親になっても幸せになれるだろう。



 次は父親役争奪戦なのだが、命名権のチャンスはまだたくさんあるのでまた頑張ってほしい。

 今年の冬だけであと5人は産まれるはずである。





 さて、子供が産まれたとあってはやらねばならない事がある。


 それは洗礼だ。


 ほとんどの日本人には馴染みが無い事だが、産まれた子の将来を祝福するために、神官に浸水をしてもらう必要があるのだ。まぁ、産湯の様なものだ。


 洗礼を行うのは、正しくは神官じゃなくてもいい。この村には商人にして神官のサヴがいるので問題ないが、もしも居なければ俺がその役をやる事になっている。

 王権神授説が正しく行われているこの世界では、貴族も神官に準ずる存在としてカウントされるからだ。王と(神の代行者に)貴族(従う者)という事だな。だから貴族はこういった慶事を言祝ぐ役も持っている。



 洗礼名という概念は無く、名を持った状態で産湯に浸けてもらったら終わり。

 名前は神が人に与えるものではなく、人が互いを理解し合う為のものとして作り上げたものだという認識だからである。

 神は名前が無くても個人を理解するが、人にそれが出来ないという事だ。


 本当に神が人を理解しているのかどうかは怪しいが。そもそも個人を認識できるのかどうかといったレベルで、種族単位が限界じゃないか?



 俺の個人的な考えは横に置き、サヴによる洗礼が行われる。俺は立会人として付き合わされている。


 サヴは祝詞を唱えながら、リーノミの身体を湯に浸けた。

 初めての事にリーノミが大きな声で泣くが、湯に浸けるのは悪い事ではない。それもまた経験なのだ。泣き声を無視して洗礼は続けられる。

 祝詞が最後まで唱えられるとリーノミは湯から離れ、体を拭いて産着を着せられる。というか、布で(くる)むだけなんだけど。赤ちゃん用に衣服を作るというのは貴族ぐらいで、小さい子供ならともかく、赤ちゃん程度なら布を巻く以上の事はしない。動きが阻害されるけど、きつく巻かれるわけじゃないから大丈夫だろう。たぶん。



 こうして俺がリーノミに関わる事は終わった。あとは母親に任せればいい。俺はいつもの仕事をするだけだ。

 と、思っていた。

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