表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

こいつら、信じらんねえ。by聡

義母と義兄をカーテンの外に追いやってから、夏美のベッドの脇にある椅子に腰掛けた。

「夏美…。」

手を握って呼びかける。思えば手に触れたのは、何年ぶりだろう。こんなに手が荒れていたのか。俺が誕生石の指輪をプレゼントした頃とは比べものにならない。

反応しない手を見ているうちに家の中のことが心配になってきた。何もかも任せっきりだったから、どうしたらいいのか、見当がつかない。

家のことを考えていたら、夏美が実家に対してボヤいていたことを思い出す。「私は使用人じゃないっつーの!」と。頼られているといえば聞こえが良いが、新婚の頃から、何かと借り出されている。世話になっていることは確かだし、古い考えといえばそれまでだが、もう富良野家の人間になった夏美を、今だにやたら便利に使うのは、俺としても良い気がしない。ましてや、山川家の冠婚葬祭に俺ら夫婦に旗を振らせているのだ。普通なら、跡取りである義兄夫婦がするべきことのはずだが、こういうとき、奴らはのんびりと座ってこちらが指示を出さない限りは、くつろいでいる。

夏美は一見、山川家の両親に溺愛されているようにも見えるが、蓋を開ければ、便利使いなのだ。夏美が実家を避ける気持ちもわからないでもない。


それにしても、だ。なんだ、さっきの会話は!義兄はまだしも、義母に至っては「いなくなったら困る。」と言っているように聞こえたぞ。しかも集中治療室でケンカするかよ。


「聡さん、ちょっといい?」

義母がカーテンの隙間からそっと声をかけてきた。あえて露骨にイヤな表情を浮かべて椅子から立ち上がる。

「ごめんなさいね。話しておきたいことがあって…。」

義父の夢に、かつての部下である石津さんが現れたこと、石津さんの話によると、夏美は三途の川の手前にいて、「私は価値のない人間だから」と言っているらしい。非科学的だが、どこかスルーできない話に驚いていると義兄が口を開いた。

「何か、心当たりはある?」

呆れて思わずため息が出た。単身赴任してることをとやかく言いたいのかよ?夢の話が本当なら、確かに全く無関係とは言えないけど、少なからずアンタにかなり原因があると気づかないものかね。

やっとの思いで、俺は一言だけ言った。

「細かい用事が多くて、疲れてるんじゃないですか?」

こいつら、信じらんねえ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
よろしくお願いします。☆小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ