僕たちの主張。by俊太郎&莉乃
「なんだ?どうしたんだ?」
僕たちの言葉に、おじいちゃんが驚いた表情をした。
「ここじゃなんだから、場所を変えたいんだけど、いい?」
返事を聞く前に僕は歩き出した。自販機コーナーを探してキョロキョロする。
「お二人は、ごゆっくりぃ〜。」
莉乃が病室の両親に声をかけてドアを閉めた。おじいちゃんとおばあちゃん、僕と莉乃の四人で自販機コーナーに向かった。
「あの…。お母さんは、僕たちのお母さんだから、…だから、その、僕たちのことを一生懸命やってくれてるんで、だから…。」
「だからね、お母さんは忙しいの。普段、お父さんの分まで頑張っているから…だから…。」
煮え切らない僕をフォローするために莉乃も口を開いたが、言いづらくて、二人して途中でつっかえてしまった。
おじいちゃんおばあちゃんが驚いた表情をしている。今のうちに、言い終えてしまわないと!僕は息を吸い込んだ。
「だから、あまりお母さんを…。」
「はい。そこまで!」
手を叩く音と共にお母さんの声がした。見ると、お父さんに支えられて、点滴をつないだまま立っている。
「歩いて大丈夫なの?」
「んー。少しフラフラするけどね。2人とも、ありがとう。あとは自分で言うわ。」
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「あー、うっとうしい!」
お母さんは、乱暴に点滴の針を引き抜いた。そしておじいちゃんおばあちゃんに向き直る。
「今までガマンしてきたけどね。私には私の都合があるの。私の都合も考えずに用事を頼んでこないで。自分たちだって、子育て真っ最中の頃は“忙しい、忙しい!”ってカリカリしてたわよね?」
「いや、それは…。」
おばあちゃんが口ごもる。
「それに川のほとりから、みんなのやりとりを大半、見せてもらったわ。あんた達が私を心配しているとは思えなかった。がっかりだわ。私は、用事をするためにいるの?そんなに私は価値がないの?いつまで実家の便利使いをしなくちゃいけないの?用事を一つも頼むなと言っているわけじゃないけど、私にも都合があるの。一人で回しているの。どうして、お兄ちゃんの家の用事まで私に言うの?それについて一言も挨拶すらしてもらったこと、ないわよね?礼儀知らずに貸す手は持ってないわよ。」
お母さんは、一気にまくしたてるように言った。私はお兄ちゃんと2人、護衛するかのようにお母さんの後ろに立った。お母さん、頑張って!
「そんな言い方しなくても…。だったら、どうして言ってくれなかったんだ?」
おじいちゃんも口ごもる。
「どうして?言おうとしても遮って言わせなかったくせに、よく言うわね。」
お母さんは息づかいが荒くなって、姿勢が崩れた。ずっと支えていたお父さんは、何も言わずにお母さんをソファに座らせた。今は、これがお父さんの精一杯の優しさなのだろう。
「落ち着いたら、夏美に連絡させますので、今日はお引き取りください。」
おじいちゃんおばあちゃんは、さみしそうに帰って行った。とても悲しそうな背中で。




