今度こそ帰らないとね。
「えらいことになってますやん。」
石津の声に、全員が映像を見上げる。なんだかんだ言って、まだほとりにいるのだ。
映像の中はといえば…。早朝、病院、集中治療室。大声を上げてはならない条件の揃った場所で、まさに“えらいこと”が繰り広げられている。四人で唖然として見上げていると、後ろから声が聞こえてきた。
「あらあら。私が叱りに行く必要もなさそうね。」
いつの間にか清子も駆けつけていた。
「おばあちゃん!」
「ひいばあちゃん!」
3人で清子に抱きつく。
「せっかくだから、やっぱり顔を見ておこうと思ってね。渡って来ちゃった。」
清子がいたずらっぽく微笑む。
「聡君、なかなかやるじゃない。さあさあ、今度こそ帰らないとね。聡君のためにも今のうちにお目覚めしてあげないと。」
清子の言葉に夏美がうなずく。
「じゃあ僕たちは、起きたらタクシーで病院に行くから。」
「私たちもおじいちゃんとおばあちゃんのこと、怒ってあげる!」
俊太郎と莉乃が目を合わせうなずく。
「おばあちゃん、石津さん、ありがとうございました。」
「どういたしまして。」
清子が微笑む。
「お嬢さん、幸せですなあ。エエご家族に恵まれて。ほな、お元気で。」
夏美の両脇で俊太郎と莉乃が、それぞれ夏美と手を繋ぐ。そして三人で元気よくお辞儀をした。
「ありがとうございました!」
ほとりから三人の姿が消えていった。
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「うるさいなぁ…。」
目を覚ますと開口一番、夏美が呟いた。
「夏美!?」
「夏美ちゃん!」
「おい、わかるか?」
“えらいこと”になっていた三人が口々に叫んだ。
「ここ、病院なんでしょ?静かにしてよ。」
「エ?」
無意識に「ここ、どこ?」を想定していたらしい三人は顔を見合わせる。
「三途の川のほとりで、石津さんに会ったよ。」
さらなる一言に唖然とする三人を尻目に、夏美はナースコールを押す。
「こういう時って、看護師さんとか主治医を呼ぶものなんでしょ?」
夏美のこういうところが、両親に依存された要因なのだろう。
「来てくれたんだね。」
夏美は聡に向き直り、微笑んだ。
「当たり前だろう。」
「仕事優先かと思ってた。」
「ごめん。全部、まかせっきりで。」
聡の目がほんのり赤くなった時、看護師と主治医がドヤドヤと入ってきた。
「富良野さん。…え…?起きてる。ご気分は?」
「いえ、これといっては…。」
話しているうちに勢いよくドアが開いた。
「お母さん!」
俊太郎と莉乃が入ってきた。
「良かったあ!」
莉乃が涙目ですがりつく。俊太郎もそばに立って涙目になっている。
俊太郎が意を決して延夫と詠子に向き直ると言った。
「おじいちゃん、おばあちゃん。お話があります。」
莉乃も並んで立ち、改まった。




