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俺が迎えに行くんだ。by聡
唖然としているうちに、俊太郎と莉乃の背中が遠ざかっていった。小さいと思っていた我が子たちが大人の顔を見せて。
「パパー。」と俺の手をしっかりと握ってヨチヨチ歩いていた俊太郎は、声変わりして、俺の背を追い越していた。俺の膝の上で美味そうに酒の肴を頬張っていた莉乃も、気づけば俺の胸のあたりまでの身長になっていた。
俺は、家族を尊重してきたつもりだ。何がそんなにいけないのか?
「お母さんの話、ちゃんと聞いたのは、いつ?」
俊太郎の言葉が胸にこだまする。確かに俺は、離れている分の近況を報告していた。そういえば、夏美から何を話されたかといえば、連絡事項以外、ほとんど記憶にない。
「どうして話してくれなかったんだ…!」
俊太郎はこう言うだろう。
「話させなかったんだろう!」
そんなことない!俺は、俺は…!…どうしてだ、反論の言葉が出てこない。夏美の実家の人間に憤慨しておきながら、俺が家族をないがしろにしていると思わせてきたのか?何てことだ。
俊太郎がダメだと言っても、俺が夏美を迎えに行きたい。会って誤解を解きたい。俺の気持ちは、俺の車の助手席で微笑んでいた頃と変わらないんだから。
追いかけよう。“俺が”迎えに行くんだ。




