三人で。〜その二〜
「何、ここ?」
莉乃は色とりどりのシャボン玉に戸惑いを隠せない。
「全部、誰かの夢だそうだ。この中から、俊太郎の夢を探さないといけない。」
「こんなにたくさんあるのに?」
莉乃の驚く声に、聡は無言で頷く。
二人は途方に暮れそうになりながらも、一つずつ見て回る。
…と、そこでモスグリーンのシャボン玉の前で二人の足が止まった。
**************************************************
「お母さんの好きな抹茶のロールケーキ、買ってきたよ。…お母さん?」
ケーキの箱を持った俊太郎の顔から、だんだん笑みが消えていく。
「お母さん?…どうして返事してくれない…の?」
ウロウロと夏美を探す。
「倒れたなんて、嘘だろ?びっくりさせようと隠れてるだけだよな?早く出てこいよ。」
泣きそうになって俊太郎が叫んでいる。
**************************************************
「お兄ちゃんだ。」
「俊太郎…。」
俊太郎の表情に、二人は切なさを隠せない。
「よし、入るぞ!」
涙をこらえて聡が声をかける。
「わかった…。」
聡の目の端の光を気づかないフリをして、莉乃が頷くと、二人の体は再びふわりと浮いた。
涙目の俊太郎の前に二人は立っていた。
「お兄ちゃん!」
「俊太郎、行くぞ。」
「お母さんは?」
「今から迎えに行くぞ。」
「じゃあ、お母さんに出かけてくるって言わなくちゃ。」
俊太郎は事態が飲み込めず的外れなことを言う。
「とにかく、行くよ。」
莉乃が俊太郎の手を取る。
「急ぐぞ。いいか。」
「なんなんだよ?…ぅわっ!」
聡の声で三人ともふわりと浮かんだ。
ストンと着地して、あたりを見渡す。
「お母さんはどこにいるんだ?」
「待ってくれよ。お父さん、梨乃、どういうこと?」
「俺たちは三途の川のほとりにいるんだ。お母さんも、このほとりにいる。」
「はあ?意味わかんねーよ。三途の川って、死んだら来る所じゃねーの?」
「渡ったら、死ぬ。お母さんは、渡ろうとしている。価値のない人間だから、もう渡ると言っているらしい。」
「どうして?お母さんが価値のない人間って…。」
少しだけ、落ち着いてきた俊太郎の頭の中に、夏美の言葉が思い出される。
「お母さん、そんなこと言ってるの?」
莉乃は驚いた声を上げる。
「わからない。そりゃ色々あるだろうけど、何がそんなに不満なんだか。とにかく、時間がない。急ごう。」
「ちょっと待ってくれよ。お母さんを探す前に、俺から言っておきたいことがある。」
俊太郎が急ぐ二人を止める。
「話なら後で聞くから。時間がないと言っているだろう。」
「ふざけんなよ!」
俊太郎が珍しく険しい顔で聡を見据えた。




