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三人で。〜その一〜

「あの…、聡さん、ですか?夏美さんのご主人ですよね。」

おずおずと石津は聡に声をかける。本当は知らない相手に話しかけることは好きではないが、ためらっている暇などない。

聡は怪訝そうにしているが、かまわず続ける。

「石津と申します。ノブさん…いえ、夏美さんのお父さんにお世話になっておりました。一緒に来てもらえませんか?」

「あの…どういうことですか?」

聡は石津に会うのは初めてだが、名前だけは知っていたので、そこまで驚かなかった。

「夏美さんが三途の川の手前にいてるんです。自分は価値のない人間だから、言うて、川を渡ろうとしてはるんです。時間がありません。」

「夏美が?」

「はい。ここは、ご家族が駆けつけるのが一番だと思います。お子さんと3人で一緒に来てもらえませんか?」

「どうやって?」

「夢を見つけ入り込むだけです。急いでください。実は、川の向こうから、彼女のおばあさんが、早くおいでと呼んではるんです。」

「おばあさんが?」

清子には聡もずいぶん良くしてもらっただけに驚きを隠せないでいると、石津が言う。

「寂しい、夏美さんの手料理も恋しい、言うてます。寂しさから、般若のような表情を身につけてしまってるんですわ。」

「そんな…!」

「お子さんを連れて、川のほとりまで来てください。念じたら移動できますよって。私は先に戻って引き留めておきますから。」

言い終えるかどうかのタイミングで石津は姿を消してしまった。


「とりあえず、見つけないと。」

聡はシャボン玉のように浮かぶ夢を見て回る。夢には色がついていた。明るい色、暗い色と言うだけでは表現しきれない、幸せそうな色やおぞましい色も。その中で、淡い色ながら、少し暗めのブルーをした夢が目についた。

「莉乃!」

莉乃が「お母さん」と言いながら泣いている夢を見つけて思わず声を発した。

「どうやったら入れるんだ?」

夢に手を伸ばすと、ふわりと体が浮かぶ感覚がした。


「お父さん?」

声に顔を上げると涙目の莉乃が目の前にいた。夢というのは、意外に簡単に入れるものらしい。…などと驚いている時間がない聡は深呼吸をすると莉乃に言った。

「莉乃、お母さんのところに行こう。俊太郎と三人で、迎えに行こう。」

「会えるの?」

「急げば、会えるらしい。会って、四人で帰れる。」

「本当?」

「ああ。急ごう。時間がない。」

聡が手を差し出すと、梨乃は立ち上がり、手を取る。

「俊太郎の夢を探すぞ!」

「うん!」

二人の体がふわりと浮かんだ。


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