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「祖母ちゃんの言う興味はないけど気にはなる」

 さて、世の女性たちが「お客さん」と暗喩する別の「お客さん」と同様に、孫息子(予定)の訪れは時に不定期だった。

 それは定期的であったり前兆がくる場合もあったが、同時に不定期な時期もあったため、孫息子(予定)にも心配していることがあった。


「祖母ちゃん、いつ来てもオレのこと迎えてくれるけどさ、何かねーの」

 例によって孫(予定)はふらりと訪れたのだが、何かねーの、という曖昧な物言いに、迎える真砂の眉は上がっていた。

 ホラ、仕事じゃなくてさ、自分の用事っていうかさ、と本人も言いたいことがまとまらないのがもどかしいのだろう。ニュアンスで通じて欲しいということは十分伝わる。しかし、

「何じゃ。常々思うておったが、はっきり言いや」

実はこちらも結構鬱憤が溜まっていた祖母に一喝され、孫息子(予定)は「親の心子知らず」ならぬ「孫の心祖母知らず」と嘆くのを止め、攻めの姿勢へ打って出た。

「ならそうさせてもらうけどさ、祖母ちゃんいつもオレのこと待っててくれるけど、誰かいねーの? たまにはさ、トモダチとか」

 そう、孫(予定)が気にしていたのはこのことだった。

 一族の仕事は真砂が次期当主であるため、いくらでも都合をつけられる。だが友人関連ともなればそうはいかない。

 幼い頃から大人の思惑で動かされ、慣れていた祖母はともかく、思春期であるからには突然約束をキャンセルさせられれば、しかもそれが何度も続くようなら、少しくらい友人関係がこじれるのではないか。

 というか、それがフツーだろ!? と孫(予定)的には正直肩をゆさぶってでも問い詰めたいところだった。しかし相手は女性、しかも祖母。

 フェミニズムと身内意識とこの過去においては滑稽なものとなってしまっている現16歳の未来の祖母への敬老精神とが重なって、自分でもわけがわからない状態と化していた。

 未来においての祖母には友達と呼べる人がいた。けれど同居していない人間が、身内とはいえ、どれほど交友関係を把握できるものだろう。

 ご多分に漏れず孫息子(予定)も存在を知ってはいたが、肝心な相手の名前や出会った時期までは把握していなかった。

 こーゆーのはオレじゃなくて別の孫である孫娘(予定)の方が詳しーんだよな。

 聞いときゃよかった、と内心で反省しながら孫息子(予定)は言葉を続けた。

「仕事だけじゃなくてさ。何つーか、自分の用事っていうか、ねーの? そーゆーの」

 実体はないものの頬杖をついて孫(予定)は言った。

「突然来る時だってあんじゃん。オレ。まあ自分で調整できない以上、オレにはどうしようもないわけだから、そこは勘弁して欲しいんだけど。でもオレが来たことを、特に誰かにフォロー入れてる様子も見えねーし。そりゃあ一族から電磁波がどーの言われて携帯持たされねーのは知ってるけどさ」

 でも祖母ちゃんならいくらでも方法あるよな?

 などと孫息子(予定)が指摘する通り、確かに真砂なら、陰陽師のように式紙を打つといった方法がいくらでもあった。

 イヤだ、おばーちゃんはボクの!! と主張をする年齢ではなくなったため、身内としてはこういう心配も出てくるのだろう。

「何と。そなた、興味があるのか」

「いや、祖母ちゃんの言う興味はないけど気にはなる。で、いんの? トモダチ」

「おるぞ。高校へ入って一人増えた」

 今では自分を含め四人じゃ。

 常に行動を共にしておるぞ、そう答えた祖母の顔には高校生らしいほころびがあって、祖母ちゃん大事にしてるしされてんだな、と思いながら、自分も未来の実年齢にふさわしい表情を浮かべていることに気が付かない孫息子(予定)だった。

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