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 閑話その3 「孫だよね。子の子……って書いてあるけど」

友達その3 彼女

 放課後、人の絶えた教室で学級日誌を記入し終わり日直の業務を終えた彼女は近付いてくる足音に顔を向け、驚いた。

 足音の主は帰宅部であるためとうに帰っているはずの真砂だった。

 というのも、普段真砂は滑るようななめらかさで足を運ぶため足音など立てはしない。

 そんな彼女が足音を立てる時は足音を聞かせる相手に話--というか、相談のある時に他ならない。

 よって彼女は真砂が自分に相談があることを察し、とりあえず隣の席の椅子を引いて、座るように声を掛けたのだが。

「……今、何て言ったの?」

 座って間もなく、そなたにも聞いておこうと思うてのう、と前置いて真砂の口から出た言葉に驚愕した彼女はもう一度聞き返し、

「うむ。そなた、孫とはどのようなものと思うかのう」

と繰り返されて、しばらく沈黙を保った結果、思わずそこら中に何か解決策が落ちてないかとうろうろ視線を泳がせることとなった。

 確かに彼女は普段聞き役に徹している真砂がたまに喋る時もあり、またその内容が喋った相手への相談であることを知っていた。

 ただし物事には順序というものがある。この場合もまさしくそれで、真砂と仲の良い3人の中で自分の番がやって来るのは友人としての付き合いの長さからまずときこ、次がしづかで最後にやってくるのが自分だった。

 なおかつ真砂が彼女の元へ相談してくる頃にはすでに先の二人から事前に相談内容が告げられてもいた。

 しかし今回はそのときこからもしづかからも全く何も聞いていない。

 突拍子もない質問がきたりするからまあ頑張って--そう言って肩を叩いたり、あるいはにこやかに微笑んでいた二人は両方とも帰宅部のため、教室どころか学校を去っている。また、部活の代わりのごとく家の用事で飛び回っているため連絡がつく確率も非常に低かった。

 かくいう彼女も家の用事が控えているため、日直の仕事が終わったら即座に下校するところだった。

 どうする。……どうする!?

 そんな平静を保とうとしながらも思いっきり動転しまくっていた彼女を救ったのは、皮肉なことに自分の足で。

 何と無意識の内に動かしていた足が机に当たり、床にこすれる音と机の中身が上下したことでゴトンという重い音が立ったことからひらめいた彼女は、追いつめられた状態にあったためあっさりそのひらめきにすがりつき、机の中から音の主の重い物を出して読み上げた。

「孫だよね。子の子……って書いてあるけど」

 とこのように机の中に置いていた国語辞典で「孫」を探し出し、引用して読み上げると、同時にこれだけでは真砂に対してあんまりだと思ったのか、同じく机に当たったことからカバン掛けに掛ていたため揺れていたカバンの外ポケットから携帯音楽プレーヤーを取り出し、仕草を出してかかんでもらった真砂の耳へイヤホンを掛け、なんでこんなにもかわいいのかと孫のかわいらしさを歌い上げる某桜桃農家氏の歌を再生したのだった。

「--なるほど。こういうものかえ」

「……たぶん」

 数日前に彼女のすぐ上の姉がイタズラで勝手にダウンロードし、プレーヤーへ入れたものがとんだところで役に立った。彼女は感心したため少し怒っていた姉を許す気になったし、真砂は真砂でふんふんと最後まで聞いていた。

 その後、真砂がその曲を購入したか、彼女の音楽プレーヤーにその曲がまた残っているかは定かではないが、聞き終わった真砂の顔がほころんでいたこと、彼女は彼女で真砂の様子からすぐ上の姉のイタズラを大目に見たため結局はうまく収まったようだった。

  (文字数の都合で作者の携帯端末では編集ができなくなるため、前後にわけたのを元へ戻させていただきました。申し訳ありません)

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