閑話その3 「……そうですわね。まずはきちんと話を伺うことから始めましょうか」
友達その1 ときこ
その日学園へ登校してきて授業が始まるまで準備さえ整えておけば誰もがするように、ときこも友人たちと話していた。
といっても主に話すのは最近できた友人のしづかだけで、もう1人の友人である真砂は会話に加わらずにいつもの通りのんびりと自分たちの会話を聞いていた--と思うには様子が違って見えたのだが、かといって自発的に話すところまではいっていないのだろう。
しづかの会話に相槌を打ちながら真砂の考えがまとまるであろう昼休みに水を向けてみようと決めたときこは、後ろでしづかの会話が切れるのを待っていた委員長へ声を掛け、彼女の用事を聞くと一緒に付き合うことを快諾した。
確かに担任の教師に転校生のしづかの面倒を見るよう頼まれたのは自分だった。だが、いつまでも自分たちだけと付き合い続けるのはしづかのためにならないだろう。
同時にその誠実さからクラスの委員長に選ばれたもののどうしても引っ込み思案な点が抜けず、なおかつその性格を変えたいと願っている委員長のためにも積極的なしづかとの仲を取り持って互いに互いを刺激させよう。まずは委員長へ打診しなくては--そんな思惑から委員長の用事に付き合い、終わらせた後は朗らかに会話を弾ませながらその流れで委員長をしづかの元へ連れてこようとしていたのだが。
「何……でしょう、ねぇ」
「本当に。どうなさったのかしら」
まだ先生が来ていないのに静まり返っていた教室へ委員長と共にいぶかしみながら入ってみると、そこには教室中の注目を浴びている真砂としづかの姿があり、ことにしづかがまるで世界の終末でも告げられたかのように頭を抱えていたことからときこは即座に状況を把握し、頭痛に悩まされそうな額を押さえた。
「あ、あのぉ、皆さん、どうなさったのでしょう!?」
しかしおろおろとうろたえる委員長の声に自分がこの騒動を収めなければならないことを悟ったときこはできる限り冷静さを取り戻し、
「……そうですわね。まずはきちんと話を伺うことから始めましょうか」
おそらく真砂さんが原因なのでしょうけどね、と苦笑いを浮かべながら委員長と共にほとんど衆人環視状態である二人の元へ寄って行った。