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恩返し


いよいよ3周目。


夕です。


「あ、兄ちゃん達!遊びに来たのか!」

「おお、ゼファロス。遊ぶか」

秋弥がゼファロスに手をふりながら駆けていった。

ここ、シューストン村に飛ばされて、はや1週間。

あたし達はすっかり馴染んでしまった。

あの日、ゼファロスの母親のことがあって以来、ようやくあたし達に危険がないと村人全員が判断したらしい。

「ヒロトとユーカも!」

子供たちに手を引かれて広場に向かった。

秋弥のやつ、違和感なさすぎだろ…。

広場の中心では、今ではゼファロス含む3人と対等にやり合うまでになった秋弥がいつものチャンバラをしていた。

「ヒロトは僕とやろうよ!」

「おう、手加減なしだ」

絋斗が引っ張っていかれて、あたしも「あたしはユーカとやりたい!」と、誘われた。

「ごめんな。今日は見とく」

「えー…」

「今度必ず戦ってやる。あたしは強いからな」

誘ってきた女の子はしばらく迷ってにかっと笑った。

「わかった」

そうして秋弥とゼファロスの試合観戦に走っていった。

ふう…と小さく溜め息をついた。

広場の隅に積んであった丸太に腰かける。

「元気だなー」

「ブルータスさん」

ふいに声をかけられて首だけ向けると、自慢の顎ひげをなでるブルータスさんがいた。

「ユーカはどうしたんだ?」

「あたしは…休憩ですよ」

「ふーん。そうは見えないけどな」

それだけ言ってブルータスさんは何も追求せず、子供たちのチャンバラに視線を戻した。

簡単に言えばあたしは今、悩みがある。

大人にも受け入れられ、この村での生活はなに不自由ない。村人はみんなよくしてくれる。

でも…だからこそ悩みがあるってわけだ。

あたし達はおいてもらっているのになにも恩を返していなくないか?

今夜、ふたりに話してみよう。



「と、いうわけだ」

「なるほど、そーいうわけね」

「そーいうわけか」

ざーっと説明すると絋斗と秋弥は理解したと頷いた。

「恩を返すっても、具体的になにするよ?」

「それを考えるためにあつまったんだろう」

「あ、そっか」

ソファーで秋弥が伸びをした。

まあ、あたしも案なんか出てないから責めることは出来ない。

「個人的にじゃなくて、村の人がいいよな」

絋斗はカーペットに胡座をかいている。

なるほど…確かにまんべんなく出来ることがいいな…。

「…話し合いの途中悪いけど、あんた達集まる場所間違ってない?」

みんな無言で考えているところにドアが開いた。

立っていたのは風呂から帰ってきたシリティア。

「使わせてもらってまーす」

ひょいと手をあげる絋斗に、シリティアはありえない…というように肩をすくめた。

それでも追い出さないところを見ると、最初よりは馴染めたことが分かる。

「なんの話してたの?人の部屋まで来て」

「あたし達がこの村に来て1週間だ。でもなんの恩返しも出来てないだろ?そのことについて」

「あーそれは大問題ね」

普通は、そんなの気にしなくても…とか言うだろ。シリティアらしいけど。

「シリティア、なんかいい案ねーかー?」

「おもいっきり人頼みじゃない。シューヤ、自分で考えなさいよ」

「シリティアのほうが頭よさそうだし」

「…しっ、仕方ないわね!」

秋弥もシリティアの扱いに慣れてきたな。

秋弥ナイスと絋斗が小さく耳打ちしていた。

「あんた達はニホンってとこから来たんでしょ?だから、そのニホンの技術で私達の手伝いをすれば?」

自慢気に言い切ったシリティアに、あたし達は顔を見合わせる。

そして。

「いいじゃん、それ!要するに『なんでも屋』ってことだろ?」

絋斗が目を輝かせて言った。

「なんでも屋…万事屋か!オレも賛成、夕花は?」

万事屋…それなら誰にでも、誰の手伝いも出来る。

「賛成に決まってるだろ」

ソファーから飛び起きて秋弥が拳を突き上げた。

「シューストン村万事屋結成!!」

あたしと絋斗も立ち上がって拳を突き上げた。

「明日から早速活動だ!絋斗、夕花、シリティア!」

「「おーっ」」

あたし達が盛り上がる中で、シリティアだけが怪訝そうに眉をひそめた。

「ちょっと待って、あたしも!?」

絋斗がシリティアの肩をぽんと叩く。

「俺たちまだ村のこと詳しく知らないし、シリティアがいたほうがいいかなーって」

「むぅ…」


そんなわけで万事屋結成。

ただいまメンバーは4人。

異世界での生活も悪くない。楽しくなってきたな。






秋雨さんよろしく♪

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