罠!
お待たせしました、緋絽です!
久しぶりで書き方を忘れました(・∀・)
剣を持った男は人のいい笑みを浮かべて俺達を案内し始めた。
「いやー、親切な人がいて助かったな!」
秋弥がニコニコ笑いながら言う。
「そうだな。野宿を免れられてよかった」
フードの裾を摘んでそう返した。
「明日には村に帰るんだろう?」
夕花がシリティアに聞く。
「そうよ。荷物、忘れないようにしなくちゃ」
「でも王都ってすごいねぇ。都会ってカンジ」
紅葉が思い出して感心したように頷きながら言った。
「まぁ、実際中央都市なんじゃね?王様が暮らしてるんだしさ」
「ここからその宿までどのくらいかかるんだ?」
夕花が男に尋ねた。
「もう少し先だ。この時間まで開いてる宿となると、もう王都の外れに行かなきゃないんでな」
「いえ、すみません。わざわざ案内していただいて」
あーもうほんとに。まじありがたいっす。
そこでふと、ヨイチが黙りっぱなしなことに気が付いた。
「ヨイチ?どうした?」
考え込んでいたヨイチがハッと顔を上げる。
「いや。別に」
若干目を逸らして答える。
こいつ。なんか隠してんな?
「いーやっ、なんか隠してる!言ってみろ!」
ヨイチがギョッとした顔をした。
そしてシリティアの方を見て、また俺を見直す。
「……他の誰にも言うなよ?」
囁き声に話しづらいことなのかとちょっと身を寄せる。
「言うなよ!?」
「わーかった、わかったからっ。ほら、早く」
催促すると渋々そうに体を寄せてきた。
「……なんでこの人、僕らがワケアリだと思ったんだろう?」
「え?そりゃフード被ってたからだろ」
何を今更。フード被って街中歩いてたら底抜けに怪しいじゃないか。
「何言ってるんだヒロト。フード被ってる人なんて街中にたくさんいたじゃないか。旅人とか、特別な身分の方はフード被って顔隠すのがほとんどだろ」
「そうなの!?」
いや、待てよ。そういやさっきからフードの人ちょいちょいいたな。
「はーなるほど 」
もとの世界にはない感覚だな。
ヨイチが険しい顔で俺の顔を覗き込む。正確には、俺の目を。
しばらく無言で見つめて、男にチラッと視線を向ける。
「………思い過ごしだといいけど」
「へ?」
「いや、………ヒロト達、気をつけといた方がいいかも」
「え、あ」
ヒロト達ってことは───俺達の目か!
バレた!?んなわけあるか!?だって、フード被ってて見えづらいはずだ。
“はず”だから、確実じゃないのか!?
一気に体の芯が冷える。
固い表情をしていたのかヨイチが俺を見て溜息を吐いた。
「あくまでも、もしかしたらだからな。警戒しすぎるなよ」
「あ、あぁ」
「───さぁ、着いたぞ」
男が立ち止まったのは先程から10分ほど歩いてからだった。
「ここ…?」
小さめの普通の民家ほどの大きさだ。
「家族が巣立ちして部屋が余ったんで、宿屋やってんだ」
「へぇー」
シリティアが物珍しそうに宿を見回す。
「いい感じね」
「シリティア是非僕と同じ部屋にグフッ」
「「うるさい」」
ふざけたことを言ったヨイチを紅葉と夕花がぶっ飛ばす。
お、おおふ。
何気にシリティアが2人に苦笑してるからな?
「ヨイチバッカでー!」
「うるさいぞ秋弥!」
ヨイチが噛みつくように言い返した。
しかし、と宿に目を向ける。
外観だけならまったく怪しくない。普通の宿だ。
考えすぎだったか?
「ま、とりあえず入れ」
男がドアを開けて促してくる。
それに従って中に踏み込んだ。
いざとなればヨイチもいるし、この髪と目もあるから大丈夫だろう───そんなことを、呑気に考えながら。
前にいた夕花に男の手が伸びたのを見て───咄嗟に体が動いた。
夕花の腕を後ろから掴んで勢い任せに引っ張る。入れ代わるように自分の体が前に飛び出したところで、強く喉を殴られた。
「ぐ…っ!」
「紘斗!」
夕花の驚いたような声が聞こえたが、男に後ろから喉を腕で締められて返事を返せない。
「おっと、動くなよ」
動こうとしたヨイチが固まる。
「売れそうな奴が、1、2、3…」
1人ずつ指していって最後に俺にたどり着く。
「ハハッ、6!しばらくは金に困んねーな」
「紘斗を離せ!」
「うるせぇ命令できる立場か?全員手を挙げて前に並べ」
悔しそうに全員が従う。
なんか、なんかないか。
ポケットを弄る。ライターがある。
でも、この距離でライターを着けたら俺にも燃え移るかもしんないし、下手したらこの人死ぬし。
殺したくはない。
必死に目線を下げて何か探していたら、剣が目に入った。
男はまだ腰に下げている。
とるなら今の内───。
バッと手を伸ばして男の剣の柄を掴んだ。
「なっ…」
抜き取って柄を男の腹に叩き込んだ。
「うぐっ」
男の手が緩んだ。
その隙に逃れようとしてハデに転ける。
足を引っ掛けられた。
「紘斗!」
「こいつ!」
頭を掴まれフードが脱げる。
皆から悲鳴が上がった。
やば───。
肩を掴まれ乱暴に上を向かされる。
男が拳を振り上げた。
うわやべぇ、超たこ殴られる!
そこで一瞬男が俺の目を見て怯んだ。
でも向かってくる拳に衝撃を覚悟して目を閉じる。
「止まれ!」
空気を裂くような鋭い声が室内に響く。
驚いて目を開けると、やけに立派な服を着た男が顔を険しくして立っていた。
だ、誰?誰でもいいや助かった!
男が目を細める。
拳を振り上げていた男が顔を蒼白にして後ずさった。
俺はゆっくり体を起こす。
「誘拐及び、人身売買未遂の現行犯で、城まで連行する!」
鋭い声が再び部屋を貫いた。
うん、かっこいいけどさ。
あんた誰なんだよ!
新しくリレー小説始めました。
『30 minutes』と言います。興味をもたれましたら是非覗きにいってやってください!