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とりあえず、生かされたっぽくね?

一周しました、緋絽です

雄叫びに驚いて周囲を見渡すと村人たちが歓声を上げていた。

「化け猫が逃げていったぞ!!」

いや、化け猫じゃねぇよ。山猫だわ。

「化け猫を追い払えるなんて...」

「一瞬で火をつけたぞ...」

あれ、そうなっちゃいます?手品師的な感じになっちゃいます?

「うわっ」

秋弥の小さな叫び声が聞こえた。

そちらを見ると青い髪の男が秋弥の肩を組んでいた。

「すごいなお前ら!!」

いや、あの、貴方の方がすごいっすね。

顎髭も青って。なかなかいないっすよ。

「火ってどうやってつけたんだ?」

「あの、ライターで」

「ライター?」

怪訝な顔をされる。

え、知らないの?

ライターぐらいどこの国にもある。多分。

そんなに珍しいものではないはずだ。

「えっと...」

「───村長!!」

村長?

声のしたほうを見ると金の髪の男が驚いた顔をしていた。

その男の髪に俺は故郷?を思い出す。

すげぇ、金の髪って万国共通なんだな。

金の髪の男の目線の先を辿ると、赤い髪の中年男(ただしかなり強そう)が歩いてきていた。

うわお超怖い!!

赤い髪の中年男が目を細める。品定めされている気分になり、体が硬直した。

「...村を助けていただき、感謝する」

「いや、あれは...」

自分達も危なかったし、焦ってたし、それがたまたま村を助ける感じになっちゃっただけで。

「一つ尋ねるが、貴方達は村を害するつもりがあるか」

「は...」

はぁ!?

害するってあれだよな!?迷惑かけるぜ、襲っちゃうぜ、怪我させちゃうぜ!!ってやつだよな!?

今時ありえないだろう。

いや、ありえるのかもしれないが...

俺達がそんな風に見えるのかよ。こんなに安全な雰囲気を醸し出しているのに!!

「そんなわけないっすよ...」

ガックリ肩を落として返事する。

夕花が慰めるように背を叩いた。

「こちらからも訊きたいことがある」

夕花が眼鏡を直しながら言った。

素晴らしいぞ夕花。とても様になっている。

「ここはどこだ?」

確かに。

頭の隅に異世界という言葉が浮かぶ。

いやっ決して絶対そうだと決めつけているわけではない。

だけど、髪や目が異様なほど色鮮やかだし、ライター知らないし。

異世界がなかなかしっくりきてしまうのだ。

「アルギュロス王国の王都に一番近いシューストン村だ」

えぇ!?それってどこっ!!聞いたことないよ!?

「どこから来た?」

「日本国です...」

「ニッポンコク?どこだそこは」

「地球という天体にある小さな島国ですよ...」

秋弥が消え入りそうな声で返す。

「何故そんな髪色をしてるんだ?」

赤い髪の中年男が俺達の髪を見て言った。

「さぁ…遺伝じゃないっすかね」

「魔族じゃないのか?」

「え?」

思わず絶句する。

秋弥と夕花も驚いた顔をしている。

魔族!!魔族きたよ!!すごい、超ファンタジー!!

「違います、れっきとした人間ですよ!!」

「そうか...」

夕花が一歩前に踏み出した。

「一つ、聞いていただきたいことが」

「ほう?」

「無理を承知で、お願いします。あたし達をここに置いていただけないでしょうか?」

村人たちがざわついた。

「というと?」

「あたし達は何故ここにいるのかよくわかっていないんです。それこそ今立っているこの場所がどのようなところなのかもわかっていない。誓って、村には危害は加えません。どうかよろしくお願いします」

そう言って夕花が頭を下げた。

「ここしか頼れるところがないんです。お願いします!!」

秋弥もそう言って頭を下げる。俺も続いて頭を下げた。

「...そうだな」

赤い髪の中年男が踵を返す。

「詳しい事情は中で聞こうか」

い、いいのか?

顔を上げて後ろをついていくと、一軒の民家に着いた。


「───続きを聞こう」

食卓で向かい合って座っていた。

「あたし達は恐らく、異世界から来たのだと思います。こちらの世界とあたし達の世界は似ているようで違っている。髪や目の鮮やかさ、使用する物...僅かに、違っています」

「それを信じろってか?」

「信じていただくしかありません。なにしろ根拠がありませんし、本当にそうなのかもわかっていません。ただし、ここにあたし達が存在しているのは確かなことです」

おぉ...なんか似合ってるぜ夕花。

バリバリ働く商社マンみたいだ。なんか黒い感じの。

「......」

「あなた、もういいじゃないですか」

女性の声がしてそちらに目をやる。

つい口を開けた。

綺麗な人だな!!

同じく赤い髪を腰までたらした女の人が笑って村長さん(赤い髪の中年男)の肩に手を置いていた。

「だけどな」

「若い女の子もいるんですよ。もう夜遅いことですし、悪い子ではありません。頼れるところがないのでしょう?つべこべ言わず置いてあげましょうよ」

「...わかったよ。おい」 

呼ばれて顔を上げる。

「っ、はい!?」

「ついてこい」

「は、はい」

後ろをついていくと、2階にあがり奥の部屋に通された。

「ここは男2人が使え」

殺伐とした部屋にベッドが2つ並んでいる。

「客人用だったんだが、空いていてよかった」

「あ、ありがとうございます!!」

そのまま夕花を引き連れて去ろうとしていた村長さんが振り返った。

「言い忘れてたが、俺の名はカウジェだ。シューストン村の村長をしている」

「あ、はい!!よろしくお願いします!!」

お辞儀をするとカウジェさんはニヤリと笑った。

「あぁ」

そう言って降りていった。

「...とりあえず、生かされたっぽくね?」


その夜、初めての異世界だと思われる場所で眠った。

次、夕さん!!次よろしくお願いします!!

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