洞窟外で。
おお…短い。
手書きのほうが向いている。
つくづく思った夕です。
ヨイチが入って行って20分、紘斗と秋弥が入って今10分くらいか。
月はすでに真上にさしかかっている。
「ユーカ、どうだ。何か見つかったか」
「何も」
「そうか。クレハはどうだ?」
「それっぽいものは無いです」
枯れた草をかき分ける。
ふたりが洞窟に姿を消して10分。あたし達――あたしと紅葉、シリティア、そして村長の4人は、洞窟に抜け道がないか探すべく歩いていた。
しかし探せど探せどそんなものは無い。
「ヨイチ…どうしたのかな…」
紅葉が草から顔を庇いながら言った。
「紘斗と秋弥も…」
「確かに遅いわ」
シリティアも草むらの向こうから姿を見せる。
その上に輝く月がほんのり紅く、不吉な光を放っていた。
それから更に10分ほど立っただろうか。少し肌寒くなってきた。
「これだけ探してないとなると、一方通行なのかもしれないな」
「どうしよう。入り口に戻ったほうがいいのかな」
「私はクレハに賛成ね。このままヨイチ達が出てこないようなら、村に戻って大人を呼んできたほうがいいと思うの」
そうシリティアが言って、村長も頷いた。
あたしを除く3人は、入り口に戻る、という話にまとまっているらしい。
それでもあたしは草を掴んだ。
「ユーカ?行くわよ?」
「あたしは残る。あいつらならほっとけばいい」
「え?」
シリティアは訳がわからないといったように眉を寄せた。
紅葉もなにか言おうとして口を閉じた。
「ちょっと!なんでそんなこと言うのよ!ほっとけばいいだなんて!!」
「ヨイチが心配か?」
そう言うと、顔を真っ赤にして言い返してきた。
「そう言う意味じゃないの!ユーカはヒロトとシューヤが心配じゃないの!?」
今度はこっちが眉を寄せる番だった。
心配じゃない?
心配に決まってるじゃないか。
「あんなに仲がいいのに!!」
…ああ。そういうふうにとらえたか。
ひとりで一方的に怒っているシリティアと、おろおろしている紅葉。村長は腰に手をあてて溜め息をついた。
仲がいい、か。
「あたし達が仲がいい…。」
ふと思い出す、数年前の出来事。
――そういえばあの時から、ふたりはずっとあたしの隣にいてくれたな。
「…はは、仲がいいというより悪友だな、あのふたりは」
「どういう意味よ」
「まあ、いいじゃないか。それより今のは、“あいつらなら何とかしてくれる”の意味で“見捨てた”わけじゃない。勘違いしてくれるな」
苦笑しながら手を動かす。
あたしはあいつらに感謝しているんだ。そしてあいつらを信じている。
頼りにならないことも多いけどな。
見ると、シリティアと紅葉は顔を見合せて首を傾げていた。
――と、草に埋もれた何かが見えた。
黒い…塊…?…違う、あそこだけ洞窟の壁がへこんでいるようだ。
もしかしたら入り口かもしれない。
期待を込めて草をかく速度をあげた。
ちらっと夕花さんが気になること言ってるけれど。
いつか番外編が書きたいな~。
次は秋雨さん。
話が洞窟内に戻ります。