調査隊出動
プー太です。
夏になってきました。
アイスが恋しい時期ですね。
日が沈み辺りが寝静まって暗闇に包まれている中で、僕はひとり空にどっかりと居座る月を眺めていた。
流れる雲に姿を隠しては、またすぐに姿を現す月。心なしか赤みを帯びて見える。
それはこれから不吉なことが起こる前兆のように思えた。
――あと少しで集合時間がくる。
不安が隠せず無意識に腕を触っていた。
はっとして腕から手を離す。
なんだかな……。
「ヨーイーチー」
「うわっ」
名前を呼ばれたあと突然押し倒されて後頭部を地面に打ち付けた。
「ヨイチ、ヨイチ、ヨイチー!七不思議こえーよ。洞窟なんかいきたくねー!」
「お前はシューヤか。僕は君を受け止めるためにいるんじゃない。僕の胸はシリティアのものだ!」
引っぺがして立ち上がると、頭をさすった。
髪の毛に砂が絡み付いていて変な感じがする。
「七不思議いいいい!」
「「うるさい」」
「へぶっ」
半泣きで喚くシューヤをチョップで黙らせたのは女子二人だ。
「まだ喚くかお前は。いい加減腹をくくれ。うっとうしい」
「そうだよ。大きい声出して今何時だと思ってるの」
「どうどう。ヨイチ悪いな、大丈夫か?」
「ああ」
助けに入ったヒロトに抱きついて「お化けいやだ。俺帰る」と呪文のように繰り返すヒロトはこの際無視してもいいだろう。
「女神のように美しいシリティアの姿が見えないけど、なにかあったのか?」
「ここにいるわよ!」
クレハの背後から現われたシリティアはいつ見ても綺麗だ。たとえ顔面蒼白であっても。
……顔面蒼白だって!?
「僕がついてるからね?もう大丈夫だよ。ほら、手を繋いでもいいから」
「け、結構よ」
「はあ……。ここにいつまでいても埒が明かない。さっさと洞窟まで行って、ちゃっちゃと解決して帰るぞ。案内しろ」
ユーカに首根っこを持って引き離されると先頭に放り出された。
ため息を吐いて気を入れ替える。
「ここまでは月明かりで足元が把握できてただろうけど、ここから先は危険だから念のために明かりを燈してくれ」
「わかった」
ユーカは頷くと手の平より小さく、平っべたい容器を取り出した。
親指で銀色の歯車のようなものを擦るとシュボッと音がして火が噴き出した。
見るからにこの世界の物ではない。
物珍しそうにソレを眺める僕に気付いたのか、ヒロトが説明をしてくれた。
「ライターっていって、俺たちの世界にあるものなんだ。かなり便利でさ、俺が持って行こうって提案したんだ」
「変なものがあるんだな……」
関心してライターに手を伸ばすと、ガシリと腕を掴まれた。
「ヨイチ」
「な、なんだ」
「火を移せるものが欲しい。長時間こうしているのは熱い」
無駄に迫力のある声で言われ、急いで予備用に準備していた松明を渡した。
「さあ、行くぞ」
目にも止まらぬ速さで松明に火を移すと明かりが広がった。
血走る眼をしたユーカ。君が先頭を行けばいいじゃないかと思うのはきっと僕だけではないはずだ。
しばらく歩くと僅かだが歌声が聴こえるようになってきた。
叫ぼうとするシューヤの口を塞いで足音を忍ばせ、慎重に洞窟へ近づく。
みんなの顔は緊張と恐怖で強張っていた。
「僕が様子を見てくる。10分以上帰って来なかったら絶対に入らずに引き返して村の人に知らせてくれ」
「ヨイチなに言ってるんだ。そんな不吉なこと言うなよ」
「もし、の話だから。そんなのあり得ないだろうけど一応ね。じゃあ行ってくる。シリティアを頼んだからね」
制止の声を無視して僕一人で洞窟の中へと足を踏み込んだ。
中は外に比べて空気が冷たい。
歌声は奥の方から聴こえるみたいだ。
慎重に進んではいるが、明かりがないせいで足元がおぼつかずに石を蹴飛ばしてしまった。
カツーン……。
音が反響して、波のように押し寄せる。
息を呑み込んで冷や汗を拭う。
ほっと胸を撫で下ろして気付いた。
――歌が聴こえない。
ヤバイと直感し、引き返そうと後ろに振り向くと同時に腹に衝撃が走った。
「うっ」
何かで口を覆われ、意識が遠のいていく。
意識が途切れる間際に聴こえたのは野太い男の笑い声だった。
緊張感のある話って難しいんですね(..)
さて、アイスでも食べながら反省会でもしてみましょうか。
次は緋絽さん、よろしく