表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/55

天国だったらどうする?


2番手の夕です。


夕花目線で書かせていただきます!



「なに言ってるんだ、絋斗」

こんな時に自己紹介だ?どこまでお気楽なやつなんだ。

「だって…名前わかったほうが…さ?」

周りを囲む、色とりどりの彼ら。

誰もが鋭い視線をあたし達に向けている。

だいたい自己紹介するって…言葉が通じるかすら分からないのに、この状況で名前を名乗れるやつがいるか?いたら教えてくれ。

「お、オレ……朝霧、秋弥…」

…意外に近くにいたな。

秋弥が名乗ったとたん、村人達がじりっと後ろに下がった。怯えたような表情だ。

「俺は真田 絋斗。高1で16歳」

絋斗が続くと、村人達はさらにあたし達から離れた。

仕方ない。あたしも名乗ってやろう。

一人だけ隠しても意味がないからな。

「あたしは黒井 夕花だ。ほら、次はお前らの番だぞ」

首でくいっと促す。自己紹介されたら返すのが常識。

赤髪赤目の男が一歩進み出て、あたし達の前に立った。

「見たことのない服を着ているな……どこからこの村に入り込んだ。それに、その黒い髪と目…なぜそんな色をしている?」

言葉は通じるのか?

ふたりと顔を見合わせる。

「いやー…、俺達に聞かれても…」

肩をすくめながら絋斗が答えると、赤い男はさらに目を鋭くした。

「答えろ。お前らは何者だ」

他の人々が鍬やら鎌――農具を構える。

もしかして、かなりヤバいのか?背中を冷や汗が伝う。

「そう言えば…オレら、あの時どうなったんだっけ?後ろから光が来て…」

「光…。ああ、そうだったような。絋斗に突き飛ばされた気がするぞ?」

「――そうだ!トラックだ、後ろから大型のトラックが突っ込んできたんだ!」

「「トラック!?」」

ザリッと土が擦れる音。

農具を構えた人々があたし達に迫って来ていた。

「何を訳の分からないことを言っている。こいつらを捕らえろ!」

赤い男の一声で周りを囲んでいた村人達が一斉に飛びかかってきた。

「うえっ!?」

秋弥があわてて立ち上がる。

あたしと絋斗もつられて立ち上がって、戦闘体制さながらに背中合わせになった。

「何をするかわからんからな、生け捕りにしろ!」

生け捕り…物騒な単語を当たり前のように使うな。

農具は手放したが、今度はどこからか縄を持ってきた。

両者どちらも動かない。

―――重々しい沈黙ののち、先に動いたのは相手のほう。

「ぐぇっ…!!」

背中を合わせていた秋弥が崩れ落ちる。

「秋弥!?」

振り返ったところを後ろから羽交い締めにされた。

「離せっ!変態がっ!!」

足をバタバタしても相手は大人の男だ。女の、それも高校生のあたしが敵うはずもなく。

なすすべもなく腕をきつく縛られてしまった。

「秋弥!夕花!」

そんなこんなのうちに絋斗も捕まり、腹を殴られて気絶したらしい秋弥は大男に担がれていた。

「つれていくぞ。さっさと歩け」

縄を引っ張られて仕方なく村の中へつれていかれる。

村の中に入るとたくさんの視線があたし達に注がれた。男は警戒して嫌な目を向け、女はあわてて子供を隠す。

「覚えてろよ……っ」

「まあまあ…、なんとかなるさ」

「なんでそんなに落ち着いてるんだ、絋斗」

「生け捕りって言ってたし、殺されることはないだろ」

小さな村なのだろう、少し歩くと村の端に着いた。

木でできた納屋のような小屋の扉が開かれる。

背中をドンッと強く押されて小屋の中に押し込まれた。いまだに気絶している秋弥もあたし達の隣に下ろされた。

「ここで大人しくしてろ。食料は持ってきてやる」

軋んだ音を立てて扉が閉まり、小屋の中は薄暗くなった。



――――――……

日が傾くにつれてだんだん肌寒くなってきた。

冬なのか?そう言えば、草木が少なかったような気もするな。

「………ん…、いってー…」

「「秋弥!」」

今まで死んだように動かなかった秋弥が腹を押さえながら身体を起こした。

「あれ、ここは?」

「村の隅。あたし達は閉じ込められた。秋弥が寝てるうちにおきたのはそれだけ」

「なるほど。分かりやすい」

壁に寄りかかっていた絋斗が落ちていた石を蹴った。

「トラックが突っ込んできて、目の前が暗くなった。これって俺達牽かれたってことだよな?」

いつになく真剣だ。

「牽かれたってことはオレら死んだのか!?ここは天国!?」

「うるさい、黙れ。もし本当にそうなのなら、天国ってやつは思っていたような場所ではなかったんだな」

沈黙。

あの占い師の予言が本当になったな…。鏡は何処かへ消えていた。

鏡があたし達をここへ飛ばしたという考え方は出来ないだろうか。鏡がなければ死んでいたところを、ここへ来ることで免れた……なんだそれ、あほらし。

「~~~~!!~~~!」

気まずい沈黙を破ったのはまたしても村人。

外からなにやら大声が聞こえる。

壁に空いた隙間から外を覗くと、村中を男達が駆け回っていた。


「逃げろ!!また奴が来た!!」







楽しいな、これ。


お次は3番手、秋雨さん。よろしく!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ