ベンダスのバカヤロー
遅くなってすいません。
プー太です。
今回こそはッ!てな感じでいっきまーす
シリティアがベンダスに乗った次の日。シューヤとかいう僕になにかと突っかかってこようとする奴の一言で本日の予定がガラリと変わった。
今日こそは僕の華麗な藁捌きで惚れさせてしまうぞ。
そう意気こんで来たのはいい。
なのに、だ。
「きょーは、ベンダスで競争だー!」
「それいいかも。実は走らせたかったんだよな」
「は!?ちょちょちょっと!別に怖くなんてないけどいきなり過ぎるわよ!」
「……午前中だけならいいと思う。けど、午後は掃除だからな」
『やったー!』
シリティアの美しさに見惚れている内に勝手に決められた。
「じゃー、しゅっぱーつ」
「ベンダスってどのくらいの速さで走るんだろ……」
ということで、急遽変更。
藁捌きじゃなく、ベンダスを華麗に乗り回す姿でイチコロにすることにした。
シューヤの提案だったというのは気に食わないが仕方ない。
あれから一人一頭のベンダスを連れて村の外れのひらけた平地に移動した。
「言うこと聴きなさいよ!」
「そういう時はね、こうすればいいよ」
「ヨイチ、セクハラしようとしない!」
「失礼な!僕は純粋にシリティアのためを思っての行動だ。君は黙っててくれないか」
なかなか思った通りに乗りこなせないで困惑した表情がまた美しい。
邪魔ものがいるのが大きな壁になる。
なぜ、僕がシリティアの半径2メートルに入った途端に邪魔をしてくるんだ。
――こうなったらアレしかない。
「お前たち、僕と勝負しろ!僕が勝ったら二度と僕とシリティアの邪魔をしないと誓ってもらおう」
「可笑しくないかそれ」
「のった!ルートはどうするんだ?」
「この先に一本の千年樹があるそこを折り返して、ここに帰ってくる。異論はないな」
「おう!」
「あるに決まってんでしょ!」
つい熱くなってシリティアの意見を聞き忘れるところだった。
「シリティアの言葉ならなんでも聞くよ。一秒でも一言でも多く……」
「私も参加するわ!私の事なんだから権利はあるはずよ。絶対負けないんだから!」
でも、シリティア……君ってベンダスに乗ることで精いっぱいなんじゃ……。
そんな言葉は、強い意志の籠った瞳をみてしまっては言えるわけなかった。
「――よーい……ドンッ」
僕の隣――ユーカを挟んだ――にいるシリティアを気にしながら僕はベンダスを蹴った。
初心者のくせに男二人は勘がいいらしくなかなか引き離せない。
常に斜め後ろについてくる。
千年樹が見えてきた。
抜かされることなく折り返し地点を通過した。
そこでシリティアと擦れ違う。
ほんの一瞬だけの出来事だったが、変な違和感を感じた。
違和感を抱えたままゴールに向かって走る。
「んにゃろー!加速だ、風になるんだベンダス!」
「秋弥変なこと言うなよ馬鹿!」
左を見ればシューヤが並んでいた。
――負ける!
少し強めにベンダスを蹴って加速しようとした時、悲鳴が耳に届いた。
誰か、なんて考えなくても分かる。あの声は――。
「シリティア!」
方向転換をして逆走していく。
「ベンダスに振り落とされないように摑まってるんだ!今助けるから!」
蹴り処が悪かったのか、ベンダスが飛び跳ねるように暴れていた。
振り落とされないように必死にしがみ付いているみたいだが、長くはもたないだろう。
「手を伸ばすんだ!」
「いやあああああ!」
手を伸ばしていると、そこに振り下ろされたのは暴れ狂うベンダスの足。
ベキッと木の折れる時に出る音がして、意識を飛ばしてしまいそうになるほどの激痛が走った。
歯を噛み締めてもう片方の手でシリティアを掴んで引き寄せた。
その弾みでバランスを崩してシリティアと一緒に地面に落下した。
今思えば僕が全部悪い。
護る。そう言ったのは僕。なのに、なんだこの有り様は。
――ごめんね。
後悔に苛まれながら僕は謝ることしか出来なかった。
今回はただ単にヨイチをカッコつけさせたかっただけでした。
上手く書けているか不安です。
次、緋絽さんよろしく