小屋掃除
更新が遅れたことを深くお詫びいたします…。
進学関係が……すみません、言い訳です。
夕、参ります。
ベンタスという生き物、動物は基本的に馬と同じような世話をすればいいらしい。
あたしは馬の世話もしたことがないが。
「まずは…古い藁を掻き出すんだっけ?」
「そうだ」
ひとり1つずつ熊手によく似た道具を渡された。
なるほど、これで藁を集めるのか。
「これ、結構重いね」
熊手もどきをずりずり引きずりながら、紅葉が隣に立った。
「確かに」
ふと見ると、シリティアも苦戦しているようだった。
地面に綺麗に三本の線が描かれている。
「よっし!やるか!」
「燃えてきたーーぁっ!!」
「シリティアーー!見ててね!僕の勇姿を!」
それに比べて男性陣は、熊手もどきを軽々持って、気合い十分といったところ。
まあ、不本意だが、さすが男と言っておこう。
ひとりずれてるやつがいるのは、気にしないで。
掃除の勇姿とはどんなのだ…?
「あたし達もやるか」
「そうだね。うん、頑張ろう!」
「本当に私もやらなきゃ駄目?…べ、別に怖いわけじゃないのよ!?」
小屋の中にまだベンタスがいるからか、シリティアはもうすでにあたしと紅葉の後ろに隠れている。
「それじゃあ…俺は村の方へ顔を出してくる」
村長がしばらくしていなくなると、残されたのはベンタス小屋の掃除初経験者のみとなった。
男三人が先に小屋にのりこむ。
「よっと…こうしてベンタスを避けながら掃除すればいいんだな」
秋弥は早くもコツを掴んだようだ。
それは紘斗も同じ。
「あたしも」
ベンタスの間を縫って小屋の奥にやっとのことでたどり着く。
こいつら、無駄にでかいな。
熊手もどきで藁を集める…のだが、これが意外に難しい。
「………」
上手く集まらないうえに、少しでも気を抜くとベンタスが後ろから突っ込んでくる。
しかも、なんだよお前、みたいな顔で不機嫌に鼻を鳴らす。
そんなこんなをしているうちに、藁は集まらないのに、あたしは汗だくになっていた。冬に近いはずなのに。
「ひゃあっ!」
汗を拭ったとき、ベンタスの向こうからシリティアの悲鳴に近い声がした。
回り込んでみると、シリティアが二頭のベンタスに挟まれていた。
「な、なによ!私になにか文句があるの!?」
シリティアは必死に追い払おうとするのに、ベンタスは興味津々といったように、シリティアに顔を近づける。
「~~~っ、ヒロト!シューヤ!助けなさいよ!」
「助けろって言われても…」
手綱も紐も付けられていないベンタスは、その巨体のせいもあって、簡単に動かせるようには見えない。
何も出来ずにいたところへ、ヨイチが顔をあげた。
「シリティア見てた?今の僕のテクニック!」
なんでまだ掃除してるんだ。
「見てないわよ!もうっ!あんたでもいいからなんとかして!」
「ベンタス二頭とシリティア…。はっ、さすがシリティア!君は動物までも虜にしてしまうんだね!!」
「いいから助けて!助けなさい!」
そこでようやくヨイチが自分の世界から戻ってきた。
片方のベンタスに飛び乗って、横腹を軽く蹴る。
するとベンタスはあっさりその場から数歩進んで、シリティアは二頭の間から脱出したのだった。
いつもは、ああなのに、やるときはやってくれる。
「た、助かった…」
「大丈夫?シリティア」
よほど怖かったのか紅葉につかまりながらシリティアは涙目になっていた。
「シリティアーー…ん?」
シリティアが涙をためているのに気付いたヨイチ。
「どうしたんだい、シリティア!…そうか、僕に助けてもらえて泣くほど嬉し……ぶっ」
シリティアの鉄拳がクリーンヒット。
ヨイチは腹を抱えて大人しくなった…はずが、なぜか嬉しそう。
そんなヨイチを横目で見て、シリティアが小声で言う。
「別に、ありがとうとか思ってないんだからね…っ」
それがヨイチに聞こえていたのかは分からないが、その後ヨイチは絶好調で、小屋掃除をほとんどひとりでこなしてしまった。
次、秋雨さんです。