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ピンチ!!

プー太さんよろしくお願いします!

護衛を始めて早3日、特に相手の姿を見つけることはなかった。

というのは、どうもつけてきている気配はあるのだが、シリティアの傍に俺達がいるからか手を出してきたりはしないのだ。

「どうする…」

シリティアの部屋に集まって打開策を考えている。

「手を出すつもりはねぇのか?」

「そうだとしたら変な奴だなぁ。遠くから見てるだけでいいの♥ってやつなのか?」

両拳を顎下で揃えて秋弥が小首を傾げて女声を出した。

思わず笑うとシリティアに殺気の孕んだ視線を向けられた。

「笑い事じゃないよ。ストーカーって本当に怖いんだよ?」

「その通りだ」

紅葉に窘められ肩身の狭くなった俺達を夕花が首肯して追い討ちをかける。

「ストーカーはエスカレートすることが多い。特にこういうパターンは箍が外れると厄介なことになる可能性が高い」

青い膝丈のワンピースから覗く足を組み替えて不満そうに舌打ちをする。

あの、夕花さん?年頃の女の子が舌打ちって有りなの?

「す、すんません…」

「話が出来ればいいんだが…」

夕花が組んだ膝の上に肘をついて、その手のひらに顎を載せた。

「話ができればって?」

「あぁ、自分の行動を知られていたとわかった時、どんな行動を起こすかが気にかかってな」

「ど、どんな行動って…」

紅葉が顔を引きつらせる。

シリティアが少し青ざめた表情になった。

「……なんとかしてエスカレートする前に止めるしかないわけか」

その様子に顔を引き締める。

そう。女の子にとって、これは只事ではないのだ。

男と違って無理矢理襲われるということがあるかもしれない。

それはどれほど恐怖を感じることだろう?

「どうする…」

秋弥がポツリと呟いた。

「……少々手荒になるけどいいか」

俺の言葉に全員顔を上げる。

「なんだ?」

「………あくまでこれは提案だから、無視してくれても構わない。────シリティアに囮になってもらう」

「え……」

全員が絶句する。

「紘斗、それは…」

紅葉が躊躇いがちに口を開いたのを手を挙げて制する。

「わかってる。かなり危険だし、成功するかもわからない。けど、早めに解決するならこれが一番適してると俺は思う」

シリティアの目を見据える。

「どうだ?シリティア」

「え…」

迷うようにシリティアが瞳を揺らした。

「怖いなら止める。無理強いはしない。これから先、ずっと俺達が護衛すればいいだけの話だし、危ないからな」

息を呑んでシリティアが俺を見つめ返す。青ざめた顔が僅かに震えている気がした。

ふっと短く息を吐くと俺を見て唇を噛み締めた。

「───やる。こっ怖くなんかないんだからねっ」

強く拳が握り込まれ、僅かに俺を見上げる。

挑むような眼差しに口元を緩ませた。

「ツンデレきたな~」

「つんでれってなんなのよ!!聞いたことない!!」

「いやいや俺達の世界ではメジャーな言葉だよ、なぁ?」

「おう!!オタクに人気な女子の態度ベスト10に入るぜ、多分!!」

「おたく?…まぁなんだか知らないけど…」

握り込んだ拳を開いてシリティアが僅かに微笑む。

「あ、ありがと」

その場にいたシリティア以外の全員が固まった。

デレがきた……!!

「あ、まあ、世話になってるし」

「そ、そうそう」

なんだか感動に浸っていた俺達を現実に引き戻したのはドアをノックして中に入ってきた奥さんの「夕ご飯ができたわ」の一言だった。


階下に降りて夕飯を食べた後、カウジェさんはすぐに席を立った。

「仕事?」

「あぁ、見回りをしないといけなくてな」

「見回り?」

もとの世界ではあまり使われることのなかった言葉に疑問を持って問いかける。

「最近山賊に襲われた村の話を聞いてな。近くの村だったから、一応用心のために」

「へぇ…」

「戸締まりしろよ」

奥さんの肩を軽く叩いて出て行った。



翌日俺達は自分達の戦闘服(要は制服)に身を包んでシリティアの後ろをついていっていた。

俺と秋弥は後ろを、夕花と紅葉はシリティアを挟んで並んで歩いている。

作戦はこうだ。

3人が仲良く歩いている→3人が別れる→シリティア一人になる→上手く引っかかればストーカー登場→すかさず俺と秋弥で確保。

緊張しているのか夕花以外の2人はガッチガチである。

おいおい頼むぜ~?今回失敗したらヤバいことになるからな。

「あ」

シリティアと2人が別れた。

周り道をして夕花と紅葉は別々のところに身を潜めたはずだ。

反対側の茂みにいる秋弥からサインがきた。

口ぱくで『問題なし!!』と言っている。

秋弥、俺にも見えてるから。絶対言いたいだけだろ。

溜め息を吐いて向き直る。

───しばらく経って固まった体を動かして解す。

やっぱり無理か。

日の暮れかかった空を見上げる。チラッと目を隣へ向けると秋弥が欠伸をしているのが見えた。

流石に不審に思われるだろう。

もう随分と長い間ここに留まっている。 

シリティアもそう思ったのか一瞬こちらを振り返って歩き出した。

こっそりついていく。

「ほんと、なんなんだよ…」

小さく呟く。

獲物が一人になっているのにどうして傍に行かない?まさか俺達に気づいたのだろうか?

山の中に入って小道を歩く。

薄着だからか肌寒い。そういえばこっちは冬だった。

借りていた上着を羽織る。黒の立て襟で、ボタンが金だから、学ランのようだ。

ふと昨夜の会話を思い出した。

カウジェさんが、山賊が出るかもしれないと、懸念してはいなかったか。

血の気が引いていくのがわかる。

ダメだ!!山賊に比べたらストーカーなんて可愛いものだ!!

今すぐ山から出ないと───。

茂みから出てシリティアに声をかけようと息を吸った時───悲鳴が聞こえた。

「離してよっ!!」

いかつい大男にシリティアが腕を掴まれていた。

「!!シリティア!!」

秋弥が声を張り上げて茂みから抜ける。それを追いかけるように俺もシリティアの方へ走り出す。

頼む、下手な行動をとらないでくれよ。

奥歯を噛み締めて走る。

意外と距離があって、シリティアを引っ張る大男との差がまだある。

「おぉっとそれ以上近づくなよ」

大男がシリティアの両腕を背中で拘束して顎に手をかける。

シリティアの顔が嫌悪で歪む。

「!!やべえ!!」

「触らないでよ変態男ーーー!!」

頭を振って顎にかかった指を外すと迷わず───それに噛みついた。

「うわっ」

その行動に呆気にとられ走る足を止めた。

「この…っ」

大男の顔が怒りで紅潮する。

「なんて女だ!!」

拳を振り上げた。

「まっ、待て!!」

慌てて走り出す。

次の衝撃を恐れてか、シリティアが目を瞑った。

クソッ間に合わな───

シリティアの傍の茂みから誰かが飛び出して大男に体当たりをくらわせた。

そのはずみでよろめいたシリティアをギリギリ掴んで支える。

今の、誰───。

飛び出してきた人物の髪が夕日に照らされている。

大男がよろめいたところにその人物は鳩尾に蹴りをいれた。

その俊敏さに口を開く。

大男が呻いて倒れる。

その人物は、俺達は気づかなかったが茂みに隠れていたらしい大男の仲間を引きずり出して同じように蹴りをいれた。

呻くその仲間にその人物が口を開いた。

「───シリティアに近づくな!!ばーかばーか!!」


………あれ…さっきまでかっこよかったのに。

次は夕さん!!ファイトです!!

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