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「ここ…ベランダ?」

 二人が着いたのはさやが住む家のベランダだった。

「ああ。部屋はここで間違ってないはずだ。それに、今は夜中だから玄関からインターホンなんか鳴らして行ったら迷惑だろ?彼女が出るとも限らないし」

「なるほど」

 龍哉の言葉に嵐は納得した。

 二人が尋ねて来たのはさやであり、彼女の家族は勿論、周囲の人にも気づかれてはいけない。そのためにこの時間帯に来たのだ。

 彼女の部屋の中は勿論電気が消され、暗い。けれど月明かりが窓際に置かれたベッドには当たっていて、布団が膨れているのが見えた。こんな時間だ。寝ていて当たり前なのだ。

 しかし、嵐は隣で龍哉が窓ガラスを必死にノックしているのを見てしまった。

(絶対、起きないでしょ!!)

 そう思ったが仕方ない。そのまま見ていると、何度目かで布団がモソっと動いた。どうやらこんな小さな音に気付いたらしく、布団の中の人物が起き上がりキョロキョロした後、目を擦りながら窓の方へ近付いてきた。

 どうやらこの子がさやのようだ。

「こんな所からすみません。ちょっといいですか?」

 窓越しに龍哉が言った。

「どうぞ、入ってください」

 と、彼女。

 なんと勇敢な。見ず知らずのしかも男(二人)を部屋にあげようとは。

「いや、別にここでいいので…」

 寝ぼけているのだと思った龍哉は遠慮したが、

「ダメですっ。外寒いですから」

 と否定された。

 うん、寝ぼけてはなさそうだ。

 それから少しの間押し問答が続いたが、結局、龍哉と嵐は彼女の部屋にあがった。

「君、女の子なのにオレたちなんか部屋に入れて嫌じゃない?普通はさ、怪しがったり、悲鳴あげたりしない?」

 と、嵐。

「ですよね…。まぁ怪しがってないこともないですけど。わたし、ちょっと変わってるんだと思います。こんな風なことが起きてほしいなぁなんて前から思ってたぐらいなんで…」

「こんな風なこと?」

「お二人は普通の人じゃないですよね?何か特別な組織とか、別の世界から来たとか。違います?」

「当たり」

 と、龍哉。確かに二人は今いるこの世界の者ではない。

「やっぱり。わたしはこういう普通じゃない何かが起きるのをずっと待ってたんです」

「へぇ〜。でもそういうことなら話は早いね」

 と言う嵐。

「…それで、どういった用なんですか?」

 さやが訊いた。

「そうだな…。まあいろいろ話してもアレだからひとまず俺たちについて来てほしい。話はそれからだ」

「はい。…と言いたいんですけど、そういうのってどこか別の世界とかに連れて行かれちゃったりして、わたしは突然消えてしまうって感じになるんじゃないですか?そうなると家族とかにも迷惑かけちゃうかもしれないし」

「いや、そんなことはない。君が俺たちと来ている間、こっちの時間は止まってるんだ」

「ほぅ〜」

「あ、嫌ならいいんだよ?また来年別の子捜せばいいんだし」

 嵐が口をはさんだ。

「来年…ですか?」

「うん、そう。年に一人しか選ばれないって決まってるんだよ。まぁ、たま〜に二人とかになる時もあるけどね」

「そうなんですか。あ、わたしは別に嫌なんて思ってはないです」

「じゃ、一先ず靴取って来な」

 と、龍哉。

「はい、分かりました」

 と言ってさやは部屋を出る寸前で立ち止まった。

「あの、お二人、名前は何て言うんですか?」

「俺は龍哉」

「オレはラン。漢字で書くと『嵐』。よろしくね」

「あ、よろしくです。えっと、わたしは…」

「さや、だろ?」

「やっぱりこういうのって相手の名前は知ってるものなんですね」

「ちゃんと選ばれた人のとこに行かなきゃいけないからな」

「へぇ〜」

 そう言ってさやは部屋を出た。



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