97
クルセルさんやジルドナート青年たちの一行も、赤みの強い髪の毛を後ろで一つに括った物資置きっぱのお姉さんのグループも、銅版迷宮というのに入るのが目的でここに来ているってことだよね。クルセルさんたちは道中でオーリ君とばったり遭遇して、今日はたぶん予定は中止になるって教えられてるわけだけど。
それで、銅版迷宮ってなに。
というか銅版というのがまずなんだっけ状態。
わたしは前世からの引き継ぎ要素でチートできるような、雑学から科学技術まで広範囲に亘る知識を持っているすごい猫ではまったくないので、ぶっちゃけ義務教育期に習うレベルのことですら怪しいと思うのですよ、ええ。なお、怪しさ具合は教科により大きく異なります。化学と物理が特に怪しいです、と自己申告しておく。
で、銅版です、銅版。版画や印刷関係のやつ? 高校時代、美術の時間になんかそういうの教わったようなおぼろげな記憶がなくはない……いや、美術じゃなくて世界史だったかも? あれ? どっちだっけ。
そして銅版って迷宮とくっつくような単語じゃなくない? どういうマリアージュですよそれ。習作っていうのも意味がわからないし。いえ、習作という言葉の意味はちゃんと知ってますよ。でもって版画なり印刷用なりの銅版の習作ってことなら理解できるけど、それと迷宮や神様のニフニにどういう関係があるというのか。習作を置きに、ってどこに。迷宮に?
この建物に(わたしを肩に乗せたオーリ君が)足を踏み入れたときからずっとそうだったんだけど、右手側の人が集まっている一角はみんなしてひっきりなしに喋ってでもいるのか、がやがやと騒がしい。胴や腕を守るためらしき装備を身に着けている姿が多い。集まっているのはほぼ冒険者のようだ。防具は革製のものが主に使われている感じで、全身金属鎧だとか背中に背負ったでっかい金属の盾だとか、そういうファンタジー世界によくいる重戦士系統な装いの人は見当たらない。
つかつかと歩くオーリ君は真っ直ぐに人だかりのほう、その中心へと向かっている。
…………。
………………。
………………あのさ。
すっごーくいまさらなんだけどさ、これわたしがついてきちゃダメだったやつでは?
わたしには事情は不明なれど、明らかに真面目に振る舞うべき場面なんでは?
たぶんオーリ君お仕事だよねこれ。プライベートじゃないよね。
肩に可愛い仔猫を乗っけたままお仕事しに来るってどうなんだ。
いやもう、そういう用件での外出なら猫は引っ剥がしてから出てこようよ。そりゃわたしも置いていかれてなるものかと頑張ってオーリ君によじ登っては服にしがみついたりしたけどさー、か弱い仔猫一匹どうにでもできたでしょー? なんでわたしをそのまま連れてきたんだ。うーん、やはり押しに弱いのかこの子。猫ちゃんには逆らえな~いなんてタイプでもないだろうに。
※書いている人間は絵文字、とりわけ黄色のフェイスマーク全般があまり好きではないため、リアクション機能の使用は控えていただけると助かります。




