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「あ、そうだそうだオーリ様、その竜触らせてもらうことできたりしません? 一回本物の竜に触ってみたかったんだよなー俺」
「やめろこの馬鹿」
「オーリ様いちいち礼儀で目くじら立てないから大丈夫よ? 現に俺怒られたことないもん」
「そういう問題じゃねーんだわ」
「ほんとやめて、俺らの胃が痛むからやめて」
とうとう制止する声が小声じゃなくなってきた。まあ本人が宣言するならともかく、他人が礼儀気にしないしーとか言っちゃうのはどうかと思います。
「怒られなきゃいいって思考を改めてから生まれ直してきやがれ」
「つーか俺の場合は最初に思いっきりやらかしてるからさー、いまさら態度変えるのもなんだかなー」
「え、お前なにやったの」
「うん? 二年くらい前だっけかな、防衛線が港まで下がってたのあっただろ、あんとき普通に持ち場にいただけのオーリ様に俺が『ガキがなにうろちょろしてやがんだ、引っ込んでろボケ、邪魔なんだよ!』って怒鳴りつけてなに言ってんだコイツって目で見られた話聞きたいって?」
「朝っぱらから怖い話やめろ!」
「いやー、俺この話一生語れそうだわー」
「語ってんじゃねえよ、一生胸に秘めてろ!」
「ありえねーよなあ、黒服見りゃ相手が誰かってわかるじゃん? 全然目に入ってなかったの。我ながらすげえわマジで」
なんかきゃっきゃとじゃれ合う、もとい、どつき合うジルドナート青年たちをスルーして、オーリ君はグループの中で唯一沈黙を守っていた年長の人に視線を向けた。
「え、あ、その、クルセル゠エル・ホラウと申します」
沈黙を守っていたというか、事態についていけず呆然としていただけかもしれない。
ごーーーん、ごーーーーん、と、どこか遠くから鐘の音が続けて二回聞こえてきた。
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