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人が行き交う広場を起点にし、扇状に複数の道が伸びている。幅の広い道が三本、それよりは狭い道が何本か。
人にぶつかることを懸念してやや速度を落としたオーリ君は、狭いほうの道の一本に入っていった。あちこち視線を動かすような真似はせずさっさか歩いているあたり、この近辺のことは熟知しているようだ。
わたしはというと、オーリ君の肩の上でめっちゃきょろきょろしてます。だって初めて来る場所だもん。
細い道の両側は、どちらも集合住宅になっているらしい。道に面した窓に洗濯物が下がっているのが丸見えになっている部屋があったりと、生活感丸出しな感じ。ところどころ、建物から対面の建物まで道の上を横切る形で張られたロープに、洗濯物と並んで謎の木の札が下がっている。というか木の札のためのロープに洗濯物が押し掛け同居してる状態なのかこれ。
木の札の表面にある模様をちゃんと観察すべく、じーっと目を凝らしてみる。やっぱりあれ、オーリ君が昨日内職してた金属板と同じに見える、こっちは金属じゃなくて木の板だけど。街中の飾りとしてはちょっと存在が地味すぎるから、伝統的なローカル風習か、あるいはやはり魔法的な意味があるアイテムなのかなあ。もし木の札のほうも昨日の金属板と同じ作り方するのなら、魔石を使うわけだし。
狭い道からさらに狭い横道に入り、広めの道に出て、建物と建物の隙間のような路地に入り、と、オーリ君が何度目かに道を曲がった時点でちょっとマズいかも、と思いました。無理、これ来た道正確に思い出すの無理! ここでオーリ君に置いてかれたら元いたところに帰るの無理! 仔猫の脳味噌は小さいので記憶容量には限界があるのです、わたしの物覚えが悪いのではなくて!
間違っても振り落とされたりしないように、気合いを入れてオーリ君の服にしがみつく。たぶんおろしたてと思われる上衣には申し訳ないけど、猫に爪を立てられて困るような服なら最初によじ登られた時点でなんとしても引き離してるでしょ、つまりわたしが爪を立てても問題ないってことでしょ。そもそも反対側の肩には猫より立派な爪をお持ちの白い爬虫類もくっついてるわけで、たぶんこの服もすぐに昨日オーリ君が着てた上衣のようになるのだろう。
……ところで黒っぽい服って猫の毛ものすごーく目立ちますね。
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