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結論から言うと、わたしの考えは甘かった。
ちょっと人間から食べるものを恵んでもらおうという部分はうまくいったんですよ、ええ。そこのとこだけは思惑どおりだったんです。
しかーし!
肝心の貰い物の内訳が――小魚小魚魚の切り身小魚魚の尻尾干し肉の切れ端小魚、以上!
魚率高いし当たり前に生魚だし唯一のお魚以外は味もついてないただ干しただけの保存用肉だし、ていうか本当に魚多いな! 食べたけども! せっかくの頂き物だし? 猫に限らず、ちっこい子は総じて燃費が悪いものだし? カロリーは無駄にできぬのだ。
そういえばあの布袋集める石皿があった台座って海風の神様の関係なんだっけ。そしてわたし相手に色々とお喋りしてくれたお姉さんは弟さんが船に乗るんだって言っていた。
もしかしてここ漁港が近いのかな。そう思って周囲を見てみると広場の朝市にも魚を扱っている店が多いかもしれない。あと、空気もなんだか潮っぽい香りがする――かどうかは正直よくわからないけど。前世のわたしは生まれも育ちも海岸線を持たない市、海とは遠くから眺めるものであって潮の香りが感じられるほど近づいた経験はほとんどないのである。まあ、少なくとも貰った魚は海水産っぽかった。
それにしても、ここの人たちはみんな猫に親切である。足下をうろうろしていたり並べられた品物を眺めていても叱られたり邪険にされたりしないし、たまに食べるものをくれるし。猫にとっては楽園じゃない? 貰えるのは生魚ばっかりだけど。
かつて人間やっていた経験を有するわたしとしては調理済みの人間用料理が希望なのだが、考えようによっては猫に人間の食べ物を与えてはいけませんという教育が行き届いており結構なことですね、とも言える。でもわたしは人間用の食べ物が食べたいんですけどね!
人間と猫じゃ味覚とか嗅覚とか違うはずなのに、いまのわたしってそのあたりの感覚が人間やってた頃と変わってる気がまったくしない。だから生魚や生肉より調理済みの料理が食べたいし、それと、なんとなくなんだけど、本来は猫の身体には悪影響のある人間用の食べ物もいける気がするんだよね、ほんとになんとなーく。根拠はない。
食べ物を求めてしばらくうろうろしていてなんとなくわかったんだけど、ここの朝市は広場に点在する井戸を真ん中にしてぐるりと取り囲むように店を並べるのがルール……かどうかまでは知らないけど、そういう配置にするもののようだ。もし広場を上空から見下ろせたならば、露店で描かれた四角形がいくつも見えるのだろう。
同種のお店はだいたい近場に固まっていて、わたしはそんな露店集団の中の、軽食取り扱い店が集まっている一群の中心にある井戸のそばでひと休みしている。
ほんの目と鼻の先は新鮮な食材を串に刺して焼いたものを売っているお店の並びで、食欲をそそる香りが漂ってくる。見たところ食材はどこも同じで、店によって、食材に合わせ塩をまぶしていたり、ソースをつけていたりと、味の違いで差を出しているようだ。
わたしが特に惹かれているのは、まず食材を焼いてからソースをつけ、さらに軽く炙ってからお客さんに提供している店で、焼き鳥のようないい匂いがするのだ。たぶんソースの味つけが焼き鳥のタレに近いんだと思う。
あれ食べたいなーと井戸の隣から露店の店主に向けてずうっと心の声で訴えかけているけど、残念なことに猫の一念が届く気配はない。代わりにお隣の露店のおばさんが新鮮な水と魚の切り身をくれました。また生のお魚! いいけど! 親切な街の皆さんのおかげでお腹いっぱいになった身なので文句は言いませんとも!
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