76
オーリ君の前にいた二人――ダークグレー制服の人とダークグリーングレー制服の人が一人ずつ――は、一礼すると出ていった。昨日の、ラシェト卿たちがオーリ君に対して行った頭を下げるものではなく、姿勢を正して拳にした右手を左胸に当てる形の礼だ。手を拳にするかしないかの違いはあるけど、右手を左胸にというところは同じ。でもこっちのほうがなんとなく軍隊っぽい。
二人を見送ったオーリ君だけど、どうやら彼もどこかに行くつもりらしい。解放されている大扉に足を向けながら、右肩にくっついて肩乗りドラゴンをやっているリオニルを引っ剥がそうとしている。さてはリオニル置いていきたいんですね。
「にゃー! にゃーにゃー、にゃー!!」
鳴き声を上げながらわたし的最高スピードでオーリ君に駆け寄り、よじ登る。引き剥がしたリオニルを両手で抑えながら、オーリ君がわたしを見下ろしてきた。
「……お前もか」
空飛ぶ爬虫類と一緒にされるのはちょっと文句言いたいところではあるけど、リオニルに急かされて厨房からここまで頑張ってやってきた身としては、ここでオーリ君に置いてかれるとなんか損した気分になりそうなので! オーリ君がここにいなかったらリオニルもたぶん急いでこんなとこまで来ようなんて考えなかったでしょ、そしたらわたしも朝ご飯直後に運動なんかしないでごろごろできてたでしょ。言ってしまえばオーリ君のためにここまで来たわけなので、よほどの事情がない限りはオーリ君はわたしに構ってくれてもいいと思います!
いやほんと、オーリ君に会いたいだけならリオニル一匹で好きに飛んでいけばいいのに、なんでわたしまで連れてこられたんでしょうね。リオニルの考えていること全然わからない。
オーリ君が引き剥がしたリオニルをエントランスホールの警備に当たっているダークグレー制服の一人に手渡す、その隙にわたしがオーリ君の左肩にがっちりしがみつく、左肩のわたしをオーリ君が引き剥がして警備の人へ、その間にばっさばっさ暴れたリオニルが警備の人の手から逃れる。これを二セットやったところでオーリ君は諦めた。押しに弱いなこの子。それとも面倒になっただけだろうか。
「猫は預かってもらえば問題ないか」
そんなことを呟いているけど、とりあえず一緒に連れていってもらえるらしいです、どこになにしに行くのか知らないけど。
もし置いていかれることになったら、自分が小さな仔猫であることをフル活用して哀れみを誘う「にゃー」連呼攻撃で良心に訴えかけてやろうかと考えてたけど、すんなり連れていってくれそうな流れになってよかったよかった。
※書いている人間は絵文字、とりわけ黄色のフェイスマーク全般があまり好きではないため、リアクション機能の使用は控えていただけると助かります。




