75
床のライトブラウン色をした四角の中にうっすら青みを帯びた淡灰色の一回り小さな四角があって、その内側にオリーブ色の大陸や島が配置されている。
エントランスの大きな扉から入ってきたそのままの向きでこの地図を見るのが想定された正しい見方と仮定し、さらに地図の上側が北というお馴染みのルールがここでも通用するのであれば、この大きな世界地図に描かれているのは、西側に一つ、北から東にかけてと南から東にかけてにそれぞれ一つずつの合わせて三つの大陸と、西の大陸と南から東の大陸の間に散らばる大小の島々、それから東側の南北二つの大陸に大きく囲まれた海に点在する群島だ。
生まれ変わって猫やりはじめて二ヶ月半ほどになるけど、初めて地図を見ました。これまでの猫生の大部分を人間の寄りつかない小屋の中で家族とだけで過ごしていたからしょうがないんだけど、地図も地球儀もまったく見る機会なかったからね、いままで。
なので、うわー地図だーっていう感動は当然あるんだけど、それ以上にうわーなんかすごく美術品っぽいーという驚きのが大きいといいますか。至近距離でじっくり眺めてもやっぱり継ぎ目はわからないし、海岸線の細かい部分の表現まですごいし、製作にあたり一切妥協は致しませんって感じ。はっきり言って美術館や博物館に展示されていても全然おかしくないと思う、真面目に。まあ、わたしは素材とか技法とかまったくわからない人間、もとい猫なので、完全に素人の感想でしかないけど。
めちゃくちゃ手間と時間がかかるんだろうなー、こういうの。ほんとすごい。
……って、感動に浸りたいところなんだけどねー。
初見のわたしは素直にうわーすごーいってなってるわけですが、オーリ君や他二人は足下の世界地図に対して特に感慨もなにもないようです。そりゃまあねえ、彼らにとっては普段から見ているものだろうし。もしかしたら日に何度もこのエントランスを通って、その度に目に入ってくるのかもしれないし。もうすっかり見飽きているのかもしれないし。
だからって普通に踏みつけているのを目の当たりにするとちょっとびっくりですよ。わたしの目、いまたぶんまん丸になってますよ、驚きで。
いえ、おそらくこれはエントランスを通過する人々に踏まれることも当たり前に想定しているだろうとは思うのですが。なにしろエントランスホールのど真ん中にそこそこの面積を占めているので、これをいちいち避けて歩くべしというのは、まあないなーと。床なんだからそりゃ踏まれますよねー。
こんな綺麗な細工ものの世界地図を床に埋め込むというのもちょっと理解し難いんだけど。だって床だよ、人が通る場所だよ、毎日のように踏まれ続ければいずれはすり減っちゃうんだよ。同じ埋め込むにしても壁じゃ駄目だったのだろうか。どうしても床がいいならせめて人のあまり通らないところの床とかさー。せっかく綺麗なんだから綺麗なまま長く保つほうがよくない?
って、この国の文化とか様式とかさっぱりなわたしが勝手に不思議がってるだけで、玄関ホールの床に地図とか絵とかがわりとありふれていて特別でもなんでもないってだけなのかも。
うーん、うーん、でもなー、思いっきり踏みつけるのはなー。海部分はまだしも大陸の、つまりどこかの国の上を踏むのって心理的に抵抗あったりしないのかな。ちゃっかり自国の上だけは避けてみたりして?
……自国、というかわたしのいるこの土地ってこの地図上だとどの辺りになるんでしょうね。西の大陸か、東の上か東の下か、はたまた数多ある島のどれかなのか。地図の中でこの土地にあたる部分に印が、とかあればよかったんだけど、見たところ目印っぽいものはななにもなさそうだ。地図としては最低限の情報だけのシンプル白地図ですねこれ(白くないけど)。
※書いている人間は絵文字、とりわけ黄色のフェイスマーク全般があまり好きではないため、リアクション機能の使用は控えていただけると助かります。




