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応接スペースなのか休憩や談話用スペースなのか、布張りの椅子やテーブルが配置された中を早足で通り過ぎる。うわー、でっかい暖炉ある。薪を燃やすところにガタイのいい成人男性二、三人くらい余裕を持って詰め込めそうなサイズ。いまの季節は出番なさそうだけど、冬場は活躍しそうだ。
……活躍、するのかなーこれ。照明器具は魔法の灯りに役目を譲って壁や天井の装飾になってるんだよねえ。厨房ではオイルランプもちゃんと使われていたけど、メイン照明じゃなくて補助程度。部屋の中を暖める魔法、たぶんあるよね。昨日オーリ君がそれっぽいことやってたもん。そのときは洗われて濡れ猫になったわたしが冷えないようにって狭い範囲だけを暖かくしただけみたいだけど、もしもあれの大規模版が可能なら暖房器具の出番も魔法に奪われている可能性。
ちゃんと火が入って暖房器具として使われてる暖炉見てみたいんだけどなあ。だってなんか憧れちゃうでしょ、本物の暖炉だよ。真ん前の特等席に陣取って思う存分堪能したいでしょ。
この建物に入ってからは柱の前にひっそり佇む警備の人の姿を何人も見ているけど、いまのところ仔猫を追い払おうとする人はいない。これ、首に巻いてもらった青いスカーフ効果だろうか。とりあえず首になにか巻いてたら野良猫じゃないですよーアピールになるし、それにこの布、端にオーリ君の手の紋様と同じ模様が入ってるもんね。たぶんこれのおかげでオーリ君が飼ってるここのお城の猫でーすってわかるようになってるんじゃないかな。まあオーリ君がわたしを飼ってる認識かどうかは確認してないけど、私室に連れてって面倒見るなら客観的にはもう飼ってる扱いでしょ。
というわけで、どうやら猫はお城の中を自由に歩き回る権利を得ました。椅子とかテーブルとか猫が爪を研ぎそうな家具があるのに大丈夫かなーと思わなくもない。わたしは前世で人間してた記憶のあるちょっと特別なキャットなので、お高そうな家具で爪を研ぐなんてことはやらかさないけど!
やるならオーリ君の部屋にある家具でやります。あの部屋の家具ならわたしが破壊工作するまでもなくすでにリオニルが傷だらけにしてるので。
考えてみれば家具をズタボロにしてもおそらく叱られることはないであろう環境って貴重だし、この機に思いっきりやっとくべきかもしれない。ほら、何事も経験だしー、猫に爪研げる場所は必須だしー。あとオーリ君の部屋の中なら罪悪感を覚えることなくやれちゃいそうだし。本棚に並ぶ本とサイドボードの上の置き時計とオイルランプ改めドアストッパー以外は大概傷入ってたからね、オーリ君の部屋の家具……。ただ、本や時計やオイルランプが無事だったあたり、破壊されて困る品はリオニルも一応判別しているのかもしれない。オイルランプは、あれ、ガラスが使われてるから壊れると危ないしねえ。そのあたりちゃんと教育はしてるのかも。
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