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こっわ。
魔法こっわ。
それにいまのトンデモ火力を目撃して平然としているラシェト卿やお付きの人Aさんも怖い。数時間前まで生きて動いていたナマモノを瞬時に白い灰に変えてしまう火力なんて明らかにご家庭用規格じゃないからね!? もっと驚こう???
……もしかして、この程度のこと別段驚くに値しないとか言っちゃいます? 少なくともオーリ君がこのレベルの魔法使うことには意外性ゼロっぽい反応だ。これがこの世界の魔法職――魔法士って呼ぶんだっけ、その魔法士の標準だとだいぶ怖いんですが。街中にこのレベルの火力をほいほい出せる人間がごろごろいる世界とか、ちょっとした揉め事が即命に関わりそうじゃん。
まあオーリ君が魔法を使う前にわざわざ手でわたしを抑え込んだ理由はよーく理解しました。猫が驚いて逃げ出さないように、あるいは好奇心で近づいて焼きキャットにならないようにってことですね、なるほどねー。
そして、さっきまで蛇だったもの、いまはわずかな風にも崩れる白い灰の中に、その異質はあった。三センチあるかないかほどの、やや平べったくて端ががたがたになっている乳白色。綺麗な一色ではなくて全体に粒状の緑や黄色が混じっている。
高火力にも耐えたこれが魔石なのだろう。
大きいな、とラシェト卿が呟く。
「白に色混じりなのは少しトアンの魔石に似てますね」
お付きの人Aさんの口から初聞きの名称が出てきた。
「あそこのは白に青い筋だった。ここ数年で変化したって話も聞かん」
「ここ数年だとそもそもトアンの迷宮から魔石を持って帰ったって話がないですよ」
「知らん間に魔石の色が変わっていてもわからん、と?」
「どちらにしても、これはトアン由来の魔石でもないです。トアンの魔石なら自分でも確実に判別できます」
ラシェト卿とお付きの人Aさんの会話に口を挟みながら、オーリ君は元蛇だった灰のそばに片膝をつき、乳白色の物体に右手を近づけた。
魔石の周囲を覆うように、白い蔓状のものが現れる。
なんですかこれは――とわたしが目を丸くしている間に魔石を閉じこめた籠だか檻だか封印だかなんだかが完成し、現在オーリ君の部屋の中でリオニルが玩具にしているボールもどきとなったのである。
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