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オーリ君は、蛇の中にある魔石がご近所の迷宮で入手可能なグィノソフィア由来やニフニ由来のものとは違うことは、直に見なくても感じ取れるらしいです。でも魔石がどんな色をしているのかを知りたいなら取り出して直接見るしかないということで、蛇のご遺体の損壊がその場で決まったのでした。グィノソフィアやニフニの魔石は昔からずっと同じ色同じ模様だそうで、それとはっきり違う色の魔石なら判別しやすくて助かる、というのがラシェト卿の言。ところでグィノソフィアとニフニって迷宮の名前なのか神様の名前なのかなんなのか。
一応この蛇って危険物持ち込みとかの証拠品にならないのかなあ、でも生きたままならまだしもすでに死体になっていて保管も大変だからさっくり処分もやむなしなのか。解剖して魔石取り出してから標本にするとかかな、なんてことをわたしは考えていたのですが。
左肩に陣取っていたわたしを手で抑え、右手でホールドしていたリオニルを隣のラシェト卿に預け、自由になった手でオーリ君は指先で宙に文字を書く動作をする。
あー、オーリ君利き手が右なんだ。そしてなんでわたしは抑えられてるの? いえ、別にぐぐっと力を込められているとかどこか痛くなるレベルとかじゃないからいいんだけど。
オーリ君の手が動きを止める直前、
「くるるるるぅ……!」
リオニルの一声。
軽い音を立てて地面に転がった小さな氷の塊。
「…………」
「…………」
「え…………」
最後の「え」がオーリ君である。
なにがあったかわからないけど、いきなりどこかから湧いて出た氷がオーリ君の意図したものでないことだけはわかった。
そしてオーリ君たちの視線を辿れば原因もなんとなくわかってしまった。
ラシェト卿に抱っこされているリオニルである。こいつがなにかやったらしい。
一つ咳払いをして、オーリ君は改めて蛇に目を向けた。
「〈火の十三〉」
おお、ちゃんと呪文唱えるの初めて見た――なんて密かな感動を覚えたのは一瞬のこと、一秒後にはわたしは呪文の効果を目の当たりにしてびびり散らかすことになる。
だって、さっきまで地面にでろんと伸びていた蛇が、青白く揺らぐ炎に包まれたと思った次の瞬間には灰の塊に化けてたんだよ。ひえってなりました。なにこのバ火力。
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