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これ以上にゃーにゃー鳴いていてもママもきょうだいたちも現れなさそうだと納得できるまで、わたしはそりゃもう鳴きに鳴きまくった。
あー、えーと、ちょこっと嘘。納得はしてない。
だってさー、数時間前は家族仲良く暮らしてたんだよ? なにのにいきなりわたしだけよそに持ってって放置って、あんまりじゃない?
とはいえ、延々と鳴いていても体力を消耗するだけだ。わたしはちゃんと物事を考えられる少し賢いキャットなので、次にどうするべきかという命題に意識を向けられるのである。
二十年も生きていない前世の記憶なんか、しかも人ではなく獣として生まれた今生で、いったいなんの意味があるものか、なーんて思った日もぶっちゃけあるけど、まあ経験はないよりマシなんだよね、と思いたい。無駄に疲れることはやめておこうぜーとか、混じり気なし純正品の仔猫(推定生後二ヶ月半前後)なら冷静に判断できなかったかもだし。
……お前その結論に至るまでに後先なんも考えず喉の限界に挑戦する勢いでめっちゃ鳴いてただろ、とか言うのは禁止だ。
ついでに、人間時代の記憶の混入がない純正品キトンならそもそも、親離れ子離れには早い時期に猫マミーに捨てられるようなことにならなかったのでは、と現実を突きつけてくるのもやめてほしい。
仔猫のわたしは、猫生の初め、産声を上げた瞬間から朱居泉葉としての記憶と転生者という自覚があったわけではない。ある日、特にきっかけもなにもなく本当に唐突に、あれっ、わたし猫じゃん、と思った。その次の瞬間、本当なら存在していないはずの記憶がだだーっと頭の中から湧き出てきたのだ。
そんな感じで主観的人(猫)生二周目を走りだしたもんだから、ほぼ確実に猫のわたしは朱居泉葉成分が甦る前後で別猫レベルに変貌している。具体的には、さっきまで他のきょうだいと一緒に喜んでちょっかい出していた昆虫から悲鳴を上げて逃げたりだとか、ママが持ち帰ってきたどこかの肉屋産と思われる生のブロック肉を目の前にして戸惑うようになっただとか。
……いきなり生のお肉を差し出されても困るじゃん。わたしの中の常識では、肉というのは基本的に生食するものじゃないのだからして。生食用の牛肉や馬肉が流通しているのは知っていても、人生で一度も食べたことなかったし。
そんなこんなで朱居泉葉の記憶が変に影響してしまった結果、少々様子がおかしい猫に成り果ててしまったような覚えは、なくはない……ので、これもしかしてママに「なんかこの子だけ変なんだけど。これ本当にうちの子かいな???」と思われた結果、捨て猫されるに至ったのではないかという可能性が脳裡にちらつくわけである。
もし本当にこんな理由で置き去りにされたんだったらわたしは泣く。いきなり始まった猫生、困惑することも悩むこともあったけど、それでもずっとママに甘えながらきょうだいとわちゃわちゃ暮らしていきたかった。
…………猫の脚で、仔猫一頭という荷物つきで移動できる範囲ってどのくらいなんだろうか。頑張れば仔猫のわたしでも帰りつける距離なのかな。
なお、ただ普通に引っ越しするつもりだったのに、最初の仔猫を移動させたあとで事故に遭って……などという怖い可能性はないものとする。
ないったらないのだ。
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