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「本題は、これです」
そう言いながらオーリ君が少し持ち上げて見せたのは、なにか入りの袋である。なにかっていうか、これたぶん中身あれでしょ、リオニルの爪でズタボロにされてでろーんってなってたあれ。
「ラシェト卿の提言により、新規の入団希望者に対する予備教育として、生きた魔物を用いた戦闘訓練が導入されたと聞きました」
「自分の、というよりも実質は連名ですがね、まあ、はい、その通りです。戦闘訓練というほど大層なものではありませんが。魔物といっても殺傷力の低い小物ばかりですので。主に、魔物に馴染みのない奴に実物を見せるのが目的です」
言いながら、ラシェト卿の目はオーリ君の提げている袋を窺っている。
「用意した中に蛇の魔物はいましたか?」
「蛇ですか。いえ、それはないはずですが。……オーリ様、それの中を拝見しても?」
「どうぞ」
オーリ君の手からラシェト卿の手に渡る袋。袋の中を見てラシェト卿は頷いた。
「蛇ですね」
「はい。いつからか庭に紛れ込んでいたらしく」
「それで、これの出所がこちらではないかと」
「いえ、それは違います」
オーリ君はきっぱりと否定した。
「念のため、出所がここではないことを確認したかっただけです」
……わたしにはわからないんだけど、その蛇の出所ってそんな重要なんですか。ただのちょっとでかい火を吐く蛇じゃないの?
「そういうことなら、うちではないですね。うちで使ってるのはちょっとそこらで調達してきた魔物ばかりなんで、そもそも蛇の魔物はいないかと。迷宮はどちらも蛇出ないですし。それに訓練用の小物とはいえ魔物をそう簡単に逃がすような間抜けがいるとも……――」
言いながら、なにか考え込む素振りのラシェト卿。少々お待ちいただけますか、とオーリ君に断ってから、訓練中の集団がいる方向に向き直った。
「――――中断!!」
うわ、すっごい声大きい。
「注目! 突然だがお前たちに一つ質問だ。正直に答えろよ。最近ちょくちょく戦闘訓練で魔物扱うやつやってるだろ、そのときにうっかり魔物を逃がした奴、いたら直ちに挙手!!」
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