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きれいさっぱり洗われたわたしは布にくるまれ空いていた棚の上へ。そばに置かれていた陶器でできている兎の置物に向けてオーリ君が空中に文字を描く仕草をすると、兎からじんわり熱が伝わってきた。なにこれ簡易暖房みたいな?
「しばらくここから動かずおとなしくしていろよ」
毛が乾くまでここで熱に当たってろってことですね、了解了解。まあいまの季節なら水に濡れたまま外に放り出されても大丈夫って気はするけど。
次はリオニルを洗いにかかるオーリ君。こちらは捕まえて手押しポンプの水が出るところに持っていき、上からざばざば水をかけるという雑な洗い方だった。水をかけられてテンション上がったらしいリオニルが翼で盛大に水を飛ばしまくる。
……オーリ君がわたしに動くなって言った理由がなんとなくわかった。わたしがいる棚、リオニルがはっちゃけてる井戸とはほぼ対角の位置で、少し離れているおかげでここまでは水飛沫が飛んでこないのだ。オーリ君の脱いだ上衣も同じ棚の上にたたんで置いてある。もしや水浴びの度に全方位水かけ攻撃しているのかあの白ちま竜。
ところで、わたしはリオニルは真っ白な竜だと思っていたけど、よーく見ていると背筋に沿った周辺の鱗が光の加減によってはうっすら青い光沢を放っていることがある。真っ白じゃないほぼ白竜ってとこ?
リオニルの額には、青い飾りのようなものがあった。リオニルの目の色に近い青色で、ぱっと見だと宝石の類かとも思えるものだ。細長い草の葉、あるいは長く引き伸ばした菱形を三つ、中心角四十五度ほどの扇形に並べたような装飾――に見えるけど、あれ後づけの飾りってよりは元々ああなっているっぽいんだよなあ。ただし有機物のようにはあまり見えない。
そしてリオニルの額の装飾と似たものがオーリ君にもある。立襟の上衣を着ていたときはほぼ見えなかった位置、喉仏と鎖骨の間のところに、長細い菱形三つからなる扇模様が小さく浮かんでいるのだ。鉱物のように見えるリオニルの額の飾りとは違い、オーリ君のほうは平面、肌に施されたヘナアートかタトゥーにも見える。色は黒。
肌に紋様、ほんと多いよねこの街。オーリ君と殿下だけならなんとなくイメージ的に魔法関連のなにかかなって考えるところだけど、守備隊のお兄さんたち四人組の存在があるので謎である。あのお兄さんたちはあまり魔法職って感じしなかったもん。まあ見た目と装備の剣だけで判断してますけど。あと色の違いも謎だ。
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