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豆知識、ファンタジーナイズドされた蛇は毒液ではなく炎を吐くらしい。
――――んなわけあるか!
蛇が火を使えるならわたしにだってなにか不思議パワー使えてもよくない!?
猫は普通の猫なのに蛇は謎進化を遂げているなんて不公平、不肖ながら猫の末席に連なる身としてこれを認めてなるものか。
のたうつ蛇の胴体を上から降ってきた白ちま竜が後ろ足でがっと押さえた。うっわー、爪しっかり食い込んでる。痛そう。
獲物を上に運んでは落とす遊びにそろそろ飽きてきたのか、翼ではなく後ろ足の爪を使い蛇を引き裂きにかかるちび竜。逃れようとじたばたする蛇。びったんびったん跳ね回る両者の長い尻尾。爬虫類二匹の仁義なき争いを強制的に最前列で観戦させられているわたし。
そんなわたしに向かって再びかっと口を開く蛇。
あのね、攻撃するならこっちじゃなくてもっと相応しい相手がいると思うんですけど。具体的にはいまあなたをがっつり押さえつけている白いの。
やめてやめて、なんでわたしを狙うわけ!? 頭蓋骨の中に脳味噌入ってないのかこの変温動物! 自分が死ぬかどうかの瀬戸際に弱い者いじめするんじゃない! 強者に立ち向かえ強者に!!!
心の声による抗議が届くはずもなく、蛇の顎の間に赤い光球が出現する。
逃げなくては。
さっき直撃を受けた小枝は、蛇のファンタジーパワー攻撃でまだ緑色をしていた葉っぱまで黒焦げになった。数秒で対象を灰にするようなふざけた火力はないにしても、まともに受ければ被毛焦げ焦げ猫になってしまう。
――逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ――!
強張る全身を叱咤する。
一瞬の浮遊感、そして衝撃。一秒遅れで打ちつけた身体の痛みが襲ってくる。
飛び降りたのは石畳の通り側ではなく、雑木林のある側だ。着地に失敗するのは目に見えているので、それなら石より地面のほうがマシ――などと考えられる余裕はなくて、単に雑木林側にいたのでそのまま跳んだだけ。
右側を下にして着地――というか胴体から落ちた。猫は高所から落ちても足から着地できるって言ったの誰ですか、全然できないんですけどー?
ともあれ壁から下に降りることができたし、このまま爬虫類どもから離れなきゃ。
「くるるる……」
上から、声。
白い頭がこっちを見下ろしている。ちび竜の青い色をした目が、わたしの姿を捉えている。
……なんかヤバい気がする。
ばさり、白ちま竜の翼が音を立てる。
目はわたしを捕捉したまま、飛び上がる。
――狩られる。
「くるるるる……!」
「フギャァァァァァアアアアァ!!」
わたしは一目散に逃げ出した。
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