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翼ある生き物、ドで始まってンで終わる四文字の名を持つアレ――のなんかちまっこいやつ――によって、繰り返し高所に強制連行されては落っことされる蛇。
なにこの野生動物残酷物語みたいな光景。
いや、こういうのって人間の感覚で残酷とか安易に評価すべきじゃないのはわかってるんだけどね。下に落として衝撃で相手を行動不能にする狩りの手法なんかもあるだろうし。動物の子供なら狩りの練習もするだろうし。わたしのきょうだいもマミーが銜えて持ち帰ったり小屋に迷い込んできた昆虫やトカゲ相手にわざと逃がしては追いかけて、ってよくやってたしね。なんなら朱居泉葉の意識がはっきり目覚める前のわたしもやってました、だって猫だもん。獲物をいたぶって遊んでいるとしか思えないこれも、生物としての健やかな成長には不可欠の一幕なのだ。……それが竜にも適用されるかどうかは知らない。
しかしながら、何度も壁上通路の固い石に叩きつけられる蛇を見せられれば、ひと思いにとどめさしてあげなよって気分にもなってくる。
ていうかびったんびったん落とされてもまだ動いてる蛇。すっごい丈夫だね、君。頑丈すぎてちょっと引く。とはいえ、あちこち鱗が剥がれて皮膚の下の肉まで見え、頭部には血が滲みと、見るも哀れな状態だ。
相手は仔猫サイズなら絞殺からの丸呑み余裕でいけてしまいそうな蛇なのであまり同情する気にはなれないんだけど。……というかですね、前世の人間成分に追いやられて日頃は少々影が薄くなっている猫の本能がめっちゃ警鐘を鳴らしているのだ。すなわち、こいつは敵、ただちに逃走すべき敵である――と。
逃げたくても、怪我の一つや二つ覚悟で飛び降りる以外に逃げようがないんだけど。それ以前にちょっといま動けないです。身体かっちかちに固まってます、恐怖で。全身の毛が逆立ったぼわぼわブラシ状態で、ただ唸り声を上げるだけしかできない無力な仔猫がわたしです。なんで動かないかなあ、わたしの足。
何度目になるのかは数えていないからわからないが、白いちまっこ竜に落っことされて叩きつけられた通路の真ん中で身を捩る蛇の目がわたしを捉えた。
いやあの、わたしにはなにもできないからね? どう考えても竜のが強者だからね? ちっこいっていっても仔のつかない猫サイズはあるからねあいつ。だからこっち見ないでほしい。無力な仔猫を強者同士の弱肉強食生存バトルに巻き込もうとするのやめてください、ただでさえ身動きできなくなるレベルで全身恐怖に支配されてるのに――。
もたげた首をわたしに向け、かっと大口を開く蛇。
牙のある上顎と下顎の間、なにかが現れた――とわたしが認識できたのが先なのか、蛇の口から放たれたなにかがわたしのいたところに着弾したのが先なのか。
生物としての防衛本能の発露っていうのか、脊髄反射ってすごいね、ほんと。
恐怖に竦んでいた身体が咄嗟に動き、わたしは通路の縁の上に飛び乗っていた。
そして直前までわたしが立っていた場所では、落ちていた小枝がなんか燃えていた。
なんで???
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