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目の前になにかがどさっと落ちてきて、反射的にぴゃっと全身が跳ねた。
木の枝だった。ほんの十数秒前までわたしの頭上で青々と葉を茂らせて影を作っていた、けっこうな太さのある枝である。それが途中からべっきり折れて転がっている。枝から数秒遅れで葉っぱがひらひら降ってくる。
落下地点がわたしからズレていて助かった。もし直撃してたら即死だったかもしれない。だって明らかに小さい猫が耐えられるレベルの重量じゃないもん。
っていうか、なんでいきなりこんな立派な枝が無惨なことになっているわけ? 風が吹いたらべきっといきかねないような枯れかけの枝なんかじゃないよこれ。
犯人はわかる、上でめっちゃバサバサやってるやつ。羽ばたき音に混じって小さく「きゅー」とか「くるる」とか「くぁー」とか鳴き声っぽいものが聞こえる。
いったい何者、姿を見せろ――。そう思って見上げた視界には、まさにいまわたし目掛けて落ちてくるなにか第二弾。
あっぶなっ!
ギリギリ回避はできた、正真正銘、誇張抜きにマジのギリギリで。ありがとう脊髄反射。
どこの誰だか鳥だか知らないけど、ほいほいほいほい上から物降らせるのやめなさい、下にか弱い仔猫がいるんだから!
そこの広葉樹(種類知らない)もどかどか枝を落とされて迷惑してるでしょ――――、……あれ?
わたしの目と鼻の先に落下したてほやほやの長くて褐色をした物体が、ずるりと動いた。
――あ、これ木の枝じゃないわ。
思いっきり自発的に動いてるわ、植物じゃなくて動物ですわこれ。
はい、ここで問題。細くて長ーくて手足がなくて鱗がある生き物はなんでしょうか。
――――蛇! デッカい蛇!!
わたしサイズの猫なら簡単に絞め殺せそうなサイズの蛇が、まさに目の前にいる。こんなサプライズプレゼント要らないんですが???
うわ、目が合っちゃったし。蛇に睨まれた蛙ならぬ猫になってしまった。
耳に聞こえる低い唸り声が自分の発している音なのだと、理解するのに数秒かかった。
身体が竦んでいる。
動けない。
今世の死因は蛇かー。蛇の餌になって終わるのかー、そっかー。……来世こそは自然死を目指したいですね、さすがに。
バサバサ、羽ばたく音。
そういえばこの音の主はいったいなに。
――なにかが落ちてきた、第三弾。
第一弾の木の枝(緑と茶色)、第二弾の蛇(茶褐色)、それらに続く第三弾は白かった。
なんか白いのが上から矢のように落ちてきたかと思えば、間髪を容れずまた飛び上がった。――長い蛇を連れて。
羽ばたく翼の端がわたしの鼻先を掠める。
白い、本当に白い生き物だった。
翼抜きの大きさは小柄な大人猫くらいだろうか。
長い尾を持つ爬虫類の頭に一対の角をつけ足し、コウモリのような大きな翼を生やした姿をしている。
身体をくねらせ暴れる蛇を両の足で捉えたまま、翼を大きく羽ばたかせ上昇していく。
くるる……と機嫌よさそうな声が聞こえた。
そして――。
降ってきた蛇が通路の上でびたんっ、と、ものすごい音を立てた。
………………うわー。
わざと落としてるよこいつ。
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