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うだうだ考えながらも足取りだけは軽く歩いている。
通りと同じく、壁も地面の傾斜に合わせてところどころが段状になっている。壁に上がってから数度目の階段を過ぎたところで、目の前に塔。
さっきも見たやつだ。ここでも塔が通りを横切るほうの壁の始点になっている。この塔と、通りと並行する壁と、通りに交差する壁と、三つの構造物が一体になった形。
そしてそして、わたしが歩く壁上の通路は、塔の中へと続く扉で終わっていた。
これかー。ここから壁の上に出入りするのか。なるほどねー。
なお、扉は固く閉ざされている模様。わたし通れないじゃん。
試しにかりかり引っかいてにゃーにゃー鳴いてみたけど、反応はない。聞き耳を立てても誰かがいそうな気配がしないし、これはおそらく塔の中無人ですね。
扉以外に塔の中に入れるところはなさそうだ。一応、ずっと上のほうに、採光のためなのかそれ以外にも目的があるのか、スリットみたいな細長い開口部があるにはあるけど、あんなところまでよじ登るの無理なので!
この塔、けっこう高さあるんだよ。わたしの適当な目算だけど、十メートル以上はある。ここから上の開口部まで少なめに見ても六、七メートルとかですよ。
おのれ、壁から降りる他の手段を探さねば。
……といってもなあ。
有効そうなのは通りすがりの人間の人を見つけてにゃーんだけど、ないんですよ人影。前も後ろも左も右も、誰もいないのだ。
やはり最終手段、運を天にまかせて思いきってジャンプ……はやりたくないなー。
元来た方向、人通りの多かったところに戻るなら降りる先は左側だけど、こっちは下が全面石畳だ。考えるまでもなくわかる、落ちたら痛い。
対して右側、推定誰かのお宅――いや、違うかも。
顔を右側に向ければ視界に入るのは立派な木々が生えた雑木林である。
規模的には誰かのお宅の庭より公園のが可能性ありそうだ。個人宅だとしたら敷地面積すごいしお庭の手入れ大変そうすぎる。なんだけど、木々の間から遠くにちらっと建物らしいものが見え隠れしているので、個人宅説もまだ捨てきれない。
ぱっと見でも生い茂る雑草とか生えたばかりのひょろい若木とかがないし、余分な枝を落としている形跡があるので、しっかり人の手が入りまくってるのは間違いない。という理由から純粋にただの雑木林説は却下です。
手頃なところに低木の茂みなんかあればよかったんだけどねー。ないんだよねー。
あるのは背の高い木ばかり。比較的近い木でも、壁上から飛び移るにはちょっと距離が遠い。まあ跳躍力ある大人猫ならここから木の幹に飛びつけるかもしれないけど、わたし成猫じゃないし、ジャンプ力に自信ないので。
壁の上に張り出している枝も、下から見上げていたときは壁上すれすれの高さで枝が伸びているように見えてたのが、実際はかなーり上なんだよね。そりゃ上を通路にしてるなら通行の邪魔になる高さに伸びてきてる枝は落としますよね。というわけで張り出している枝に飛びつくのも無理。ダメだ、詰んでる。
地面の柔らかさに賭けて飛び降りるか、誰か人間が来るのを待つか。幸い、落ち葉掃除や草刈り、壁上通路の清掃なんかで定期的に人が来そうな感じではある。
――バサバサという羽ばたき音が聞こえる。
そりゃこれだけ木もあれば鳥もいるよね。
バサバサ、べきっ。どこかで枝が折れたらしい。
これは大きめの鳥の気配。
――……うっかり大事なことを忘れていたことに気がついてしまった。
わたしって仔猫なんですよ。聞くところによれば、肉食の猛禽類とか雑食のカラスとか、仔猫も食べるらしいんですよ。
デカい鳥 is 敵。
いま近場でバサバサやってるのが猛禽やカラスだった場合、わたし狩られる危機。
これ真面目にヤバくないです? いま隠れられる場所なんてないですよ、壁上通路の上でぽつーんですよわたし。
どうしよ、気休め程度に通路の縁の少し高くなってるとこに寄っとく?
バサバサ、バサバサ、べきべきっ。
近づいてきてるんですけど。しかもなんかこれ暴れてない?
なにが飛んでるんだろ。
音の主を探して見上げかけたとき、わたしのほぼ真上でばきっと大きな音がした。
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