19
これまでの短い猫生で悟ったことがある。
高所から落下しても空中で体勢を調えてくるっ、すちゃっ、とスマートに着地する猫、あれ絶対ウソでしょ。
さほど広くない物置小屋の中できょうだいキャットと追いかけたり追いかけられたり戯れていた経験から言うけど、わたしああいうのできる気がしない。うっかり落ちたらそのままべしゃっと顔面からいく自信ある。
大人の人間の腰くらいの高さならなんとか飛び降りられるのは、昨日いた街の海風の神様の台座で実証済みだ。それだってけっこう勇気が要ったからね。ていうかママはよく荷物を銜えてあの台座に上がれたものだ。
いまわたしが歩いている壁の上は、地面からの高さが二メートル数十センチほど。
高い。なんか無駄に高くない? 通りと民家の敷地をわけるための塀にこんな高さいらなくない?
民家が並んでいるあたりは門の周りに棚を置いて植物の鉢や小物を飾っている家が多く、それでもなお余裕があるくらいに通りの幅が広めだったのであまり気にならなかったけど、冷静に考えて通りの両側とも高い壁~だとなんか圧迫感がある。
あ、でも覗き見対策にはこのくらいはあったほうがいいのか? これだけ塀が高ければよほどの高身長の人じゃないと通りすがりにひょいっと家の中を見るのは無理だもんね。ってことはこれでいいのか、そうか……。
対覗き見犯には有効そうな高い壁だけど、調子に乗ってうっかり上に昇ってしまったわたしはこの高さがゆえに無事に下に降りられるビジョンが見えない。
この高さを一気に飛び降りるのは無理。怖いし着地に成功できるかどうか不安しかない。
来たときと同じように爪を引っかけながらちまちま降りていく……のも、できるかなあ。昇るときは進行方向がちゃんと見える状態だったからよかったけど。見えないのが怖いからって頭を下にして降りてみようとかやったら転がり落ちるのがオチだろうし。
猫だって上から落っこちて身体を打ちつけたら痛いからね、当ったり前だけど。他にどうしようもなければ思いきってジャンプするけども、最終手段ね、最終手段。
……いまのわたし、自分で高い所に上ったくせに自力で降りられなくなったお間抜けさん猫になりかけてる。そんなつもりじゃなかったのに。
うーん、絶対どこかに、壁に上がるための階段とか梯子とかあると思うんだけどなあ……。というのも、どうやらこの壁の上、定期的に掃除されてるみたいなのだ。
壁の上部は二十センチほどの高さの縁を持つ通路のように――というか通路だこれ、絶対人が通るためにこうなってるでしょ。
とにかくそんな造りなので、掃除しなければ落ちてくる木の葉っぱや小枝がどんどん溜まりそうなものなのに、実際はそこまで落ち葉が目立つ状態ではない。よっておそらく週ニとかで壁上の通路に清掃が入ってると思います。
だから、どこかに掃除の人が上り下りするための階段なんかがあるはずなんだよ、見当たらないけど。あると思うんだけどなあ。ううむ。
※書いている人間は絵文字、とりわけ黄色のフェイスマーク全般があまり好きではないため、リアクション機能の使用は控えていただけると助かります。




