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「にゃ~あ?」
「神になって以降のニフニは頻繁に馬の姿で目撃されるようになったんだけど、なぜ馬なのか理由は不明です。なーんにもわかってません。たぶん本人が馬好きだったんじゃないかなーとか言われてます」
好きってだけで馬になるとかそういうのありなんだ……。自由だな神様界隈。
ところでさ、わたしいまけっこうジルドナート青年と会話できてない? 半分くらいはお子様たちがいるおかげではあるけど、わたしがにゃあにゃあ鳴いて伝えたいことをある程度は汲み取ってくれてる感じがする。
これがオーリ君だと、わたしが鳴いてれば手でかまってくれはするけど、あれこれ説明してくれたりはしないもんね。あの美少年は猫を相手にお喋りするタイプではないようなので。あ、でもクール系寄りの顔立ちをした美形が猫相手にべらべら話しかけてたら若干イメージと違うような気がしないでもないので、オーリ君はいまのままでいいです。
「人間だった頃のニフニは、薬草の専門家でした。薬の調合とかよりも、薬草を上手に育てる方法を考えたり、植物の中に薬として使える成分があるかどうかを調べたり、新種の植物を探したり、そういうことを主にやっていたらしいです。だから神様としてのニフニは薬草の神様なわけな。ニフニは新しい植物を探し求めて頻繁に旅をしていて、そのお供として荷物を運ばせるための馬を連れ歩いていたとかで、その馬を気に入りすぎるあまり自分も馬になりたがったんじゃないか、なんてな話もあったりするなー」
へー。銅版の神様でも馬の神様でもなくて薬草の神様。じゃあ銅版はなんなの。趣味ですか?
「ニフニは旅の最中、故郷を遠く離れた先で命を落とした。距離が距離なんで遺体は故郷に戻されることなく現地で葬られ、家族には報せだけが届けられたらしい。そののち死後五十年近く経ってから神としてこの世にふたたび現れ、故郷であるザレの孫娘家族の前に姿を見せたわけだが、そのときにはもう人間の姿ではなく馬の姿をとっていたと伝えられているな」
「それ知ってる! 絵があるよ」
中学年組の片方、男の子がそう言うやぱっと立ち上がって、カウンター付近にある教室風スペースのほうに走っていった。
すぐに戻ってきた少年が手にしていたのは、画用紙サイズほどの紙の束だった。
ベンチの上に持ってきた紙束を置き、その中から一枚を探し出して「これ!」と両手に掲げて見せる。厚めの紙に描かれた、馬と老婆と老婆の家族らしき人々の絵。ジルドナート青年によれば、ニフニの帰還図と呼ばれる有名な絵の模倣の模倣、らしい。これ自体は紙に直接描いたものじゃなくて木版か銅版か石版か知らないけど刷ったものっぽいかな。
……ていうかこの絵って、今朝お城の厨房でわたしに用意された水皿に使われていた陶器のお皿にあった絵と同じモチーフだよね? もしかしてあのお皿の絵ってこの世界の神様にまつわる有名な逸話シリーズだったり?
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