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「ウルーシュカの加護は、条件さえ満たせば誰にでも与えられる。条件というのは、ウルーシュカの創造したいずれかの迷宮に足を踏み入れること、ただそれだけだ。迷宮に入ってしまえば即、すでに他の神の加護を得ている者、他の神に目をつけられていると思われる者以外は希望してなくてもウルーシュカの加護持ちになる。だからウルーシュカの迷宮が近場にあると加護の徴を持った人間がやたら多くなるわけだ。ここみたいになー。でもそれはあまり普通のことじゃないってのは覚えとくように」
ここに来てから目にした大勢の探索者のうちの大多数が手の甲にウルーシュカの徴ってやつを持っていたけど、これって実は近場にウルーシュカの迷宮がある地域ならではの珍しい光景だったらしいです。
うーん、うーん、訓練のついでに無料でお手軽資質判定が受けられます、みたいなものと考えれば、便利は便利なのかなあ。
「あと、徴の色が教えてくれるのは単なる向き不向きで、あくまで参考程度なー。最初にウルーシュカの迷宮に入ったときに出た徴の色が赤で、数年後にもう一度立ち入ったら色が青紫に変化した、なんて話もちょくちょくあるし。魔力量には恵まれてなくてウルーシュカの徴の色は薄くても、魔力の効率的な扱いに長けていてある程度までの魔法なら使いこなせるって職業魔法士はいくらでもいる」
青くて濃い色の徴だからって全員が全員優秀な魔法士とは限らんし。というか元から魔法士を志してる人間じゃない場合は、徴が青くてもそれじゃあ魔法を学んでみようかなどと考えない奴も珍しくないし、とジルドナート青年は言う。
騎士団などが新人訓練の一環として新兵をウルーシュカの迷宮に放り込む場合は徴の色を参考に教育内容を組み替えたりもするらしいです。でも個人で迷宮に入ってウルーシュカの徴を得るケースだと、徴を参考に今後の方針を変えるも無視するも自由というわけだ。
……わたしなら、たとえばずっと魔法の勉強してきたのにウルーシュカの徴が赤系色だったり、剣士志望なのに徴が青だったりしたら普通にがっくりくると思うんだよねー。すっぱりわりきってスルーってだいぶメンタル強くなければ無理じゃないだろうか。
「ってわけで戦神ウルーシュカは誰にでも加護を与えてくれる神様なんだが、その逆に誰にも加護を与えないのがニフニだ。ニフニが人から神になったのは千年以上前のことだが、そこから現在までの長い間、ニフニの加護を得たという人間は一人もいない。眷属もただの加護持ちも皆無だ」
「なんでー?」
「にゃー?」
「さあなー。生前のニフニが人間嫌いだったって話も聞かんし、単に興味がないか、面倒なだけかもなー。まあ、だから、なにが言いたいかっつーと、俺がニフニの加護を貰えてなくても当たり前ってことな。普通の神様はウルーシュカと違ってほいほい加護を与えてくれないし、そもそもニフニは人に加護を与えたって記録が存在しません」
「ニフニ、馬だから?」
おチビちゃんたちの一人が真剣な顔で言う。
「馬だから人間はダメで、馬には加護くれてる?」
「いやニフニ馬じゃないからな? あれしっかり元人間の神様だから」
ジルドナート青年、自分もニフニのこと馬の神様呼ばわりしてたくせにー。
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