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はーい、と、今度の挙手は最年少組おチビちゃんたちの一人だった。
「なんでニフニの加護は貰えなかったの?」
「お祈りが足りなかったから?」
こてんと首を傾げてジルドナート青年を窺いながら言ったのは、女の子の中で一番年下の子。
「にゃあ!」
たしかにそれ気になるー。祈りがどうこう言ってるあたり、原則はその神様を信仰する人に加護の徴が出るのだと思われるけど、通りすがりに加護をほいっとくれるのがありなくらいなんだから、しょっちゅう祈りを捧げてくれるご近所さんには信仰心の篤さに関係なく加護をばら撒くくらいのことあってもよさそうじゃないですか。
「ここはウルーシュカの迷宮もあるからだいぶ感覚狂うけど、加護ってそう簡単に与えられるものじゃないんだよ、本来は。心の底から敬う神に毎日毎日欠かさず朝晩と祈っても、一生徴が出ることがなくて当たり前くらいのもんなんだわ」
「にゃ?」
え、そんなレアなの?
見ると、お子様たちも若干当惑している様子だ。男の子の一人が離れたところにいる探索者を指差して「でも……」と言いかける。
「あー、あれなー。ウルーシュカのやつなー。あれはかなり特殊枠だからあれを基準にしたらいけません」
男の子の視線の先にいた探索者の右手の甲にあるのは、圧倒的多数を誇るうにょうにょぐにゃ~な流水模様である。ミケちゃんが欲しがってた……いや、欲しくなかったんだっけ? とにかくさっき話題になっていたウルーシュカの加護だけど、あの赤、青、紫の流水模様がウルーシュカの加護の徴であるようだ。
「にゃ~う?」
「戦神ウルーシュカは大陸のあちこちに迷宮を創造している神様です。ウルーシュカの迷宮は試練迷宮と呼ばれるちょっと変わった迷宮で、ざっくり説明すると立ち入る人間の戦闘訓練のための迷宮だな。言ってしまえば武術や戦闘向き魔法を学んだ人間が実践経験を積むのに手頃な場所だ。これが、大陸各地に全部で十三ある」
へー。ゲーム的な言い方するとチュートリアル担当神様みたいな存在なんだろうか、ウルーシュカって。
「ウルーシュカの徴は、人によって色が違うだろ? ウルーシュカの徴の色がなにを示しているか、知ってる人ー?」
最年少組三人以外はみんな挙手して、ばらばらに話だした。
「青いと魔法が得意!」
「魔力で身体強化して戦う人は赤いやつ」
「騎士団に入りたいなら紫じゃないとダメ」
「赤いと魔法士は向いてないんだって」
「うーん……まあ間違いってわけでもないからいいのか……?」
そんなことを呟くジルドナート青年。察するに、間違いとするほどでもないけどパーフェクト解答からはやや遠い、みたいな感じ?
「ええとだな、ウルーシュカの徴はその人の魔力の量と質によって色が変わります。魔力で筋肉などを強化する身体強化をやりやすい人は赤い色に、魔法を使うのに向いている人は青い色に近くなって、特に片方に偏ってなければ紫色な。で、魔力が多ければ多いほど色がはっきりして、逆に魔力が乏しい人だと薄ぼんやりした色の徴が出てきます」
つまり他の人からもばっちりわかる形でお前魔力少ないよーとかお前魔法士目指してるけど全然向いてないよとか教えられるってこと? えー……なんかちょっとやだなそれ。
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