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十日かかる怪我が九日で治るとかそういう程度で大差はないんだとジルドナート青年は語るけど、治癒までに要する期間十パーセント減はわりと大きくないですか。必要日数三十日なら三日早く、必要日数百日なら十日早く治るってことでしょ? いや、三日とか十日とか具体的な数字出したらなんかそう大した効果でもないような気がちょっとしてきたけど、でも明確に差が出てくるのってかなりすごいよね。
……って一瞬は思ったんだけど、よくよく考えればそのすごい加護を貰っている本人のヴェルゼン様って重傷者でもぱぱっと全回復する魔法を使ってたんだよね、さっき。もしかしたら分類的に魔法じゃなくて神官系職専用スキルとかだったりするのかもだけど、そのへん区別があるのかどうかも不明なので暫定的にすべて魔法であるものとしておきます。
神使様という、ジルドナート青年の言いようから推測するにトーウィス゠ルアの眷属というものの中でも上のほうに位置している存在であるらしいヴェルゼン様は深刻な外傷すら一瞬で癒し、本人が主張するには徴を押しつけられただけというジルドナート青年も少なくとも傷の治りを早める魔法を扱えることは確定なわけで、こういう魔法ヒーラーがいる環境では、トーウィス゠ルアの加護のもたらすという快癒までの必要日数短縮効果があまりぱっとしない効果と判じられるのもしょうがないのかもしれない。魔法を使われてしまえば加護効果の出番なんてなさそうだもん。
トーウィス゠ルアの加護を得た人=治癒系魔法を使える人という図式が成立するかどうかはわからないけど、疫病に強い神様なんて聞くとその信者も医療系やヒーラー系じゃないかと思うし、それこそ加護を与えられた人が全員治癒魔法の使い手でも不思議はないでしょ、勝手な印象だけど。祠の前を通ったら徴が出ただけとか言ってるジルドナート青年ですらしっかりヒーラーやれてるくらいだもん。
「どうせならもうちょい得のある効果の加護ならよかったんだけどな」
甲に紋様の浮かぶ右手をひらひらさせながらジルドナート青年はしみじみと言う。伝染病に対して強くなるって効果なら、自覚がないうちに発動している可能性もあるんじゃないかなー、一応。
「剣の道場には通ったことあるけど魔法なんかまったく学んだことなかったのに、これが出たせいで十六になってから初めて魔法習うはめになったし。そこそこ使えるようになれたからまだいいけど、なんでトーウィス゠ルアの加護が俺に来たのか未だにわかんねー」
「にゃあ?」
「マジで生まれてこの方一度たりともトーウィス゠ルアに祈ったことないからな、俺。熱心に祈れば加護が貰えるってもんでもないけどさー。祈った回数や日数で加護が与えられるなら俺の場合はまずニフニの加護だろうし。……いや、ニフニにしても真面目に祈ったことはないからあれだが」
「うにゃん?」
「ニフニの生家があった場所だの神になる前のニフニが住んでた家の建ってた場所だの、わりと近くだったんだよなー、俺の生まれた家の。ご近所にニフニを祀る祠やら石碑やらがあちこちにあったし、地元じゃなにかあればニフニ様にお祈りだったわけ」
そういえばジルドナート青年の故郷のザレってところの偉人なんでしたっけ、ニフニ。
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