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かーーーーーん、と。
不意に耳慣れない音が聞こえてきた。遠い。なんの音だろう。
「――――――――!」
遅れて微かに人の声。なんとなく人の叫び声みたいとはわかっても、内容はまったく聞き取れない。
続いてまた、かーーーーーん。さっきより近く感じる。鐘の音かな。あまりサイズの大きくない鐘だとこのくらいの高めの音が出るかも。
「――――――――!」
今度もまた人の声が続く。男の人の声だ。やっぱり叫んでる内容まではわからない。
三度、かーーーーーん。さらにちょっと近くなった気がする。
「――――――れーい!」
発生源が少しずつ近くなるなら次かその次くらいではっきり聞こえるんじゃないだろうか。
謎の音と声に耳をぴくぴくさせているわたしのすぐそばで、例の四人組も顕著な反応を見せていた。音が響いてくる方向の空を頻りに気にしている。上になにかあるのか?
大の男四人に釣られて、わたしもなんとなく上のほうを見てみる。青いお空に雲の白が映えてきれいですね。そして鳥がたくさん。
見上げながら思う。この街、電線はないけど、家の屋根から路地を挟んだ向かいの屋根へ、または庭の木から屋根へ、高い位置にロープを張って、そこから飾りをぶら下げる風習があるみたいだ。わたしの頭のずっと上で、木の札みたいなのがゆらゆら揺れている。表裏どちらにも絵か模様かが彫られているようだ。昨日はこんなの見なかったから、この街独自のローカル習俗なのかも。
わたしが頭上の木札を眺めてわーなんか揺れてるーなんてことを呑気に考えている間も、謎の音と聞き取れない叫び声のリレーは続いていた。
「――でんれーーーーい!!」
何度目かでようやくはっきり聞き取れた。でんれい。伝令? 伝令ってなんだっけ、飛脚や伝書鳩の仲間? 軍隊で伝達の仕事やる人、で合ってたよね。
どうやらこの鐘(たぶん)の音は伝令が来ますよーのお知らせらしい。へー。
「――東は昨日定期のが来たばかりだろ?」
「この鳴らし方なら緊急じゃない」
「緊急まではいかないけどヤバいかも知れないから早めに連絡入れとくね、増援準備ヨロ、ってやつじゃん。うわー、やだなー。いっそ一気に非常事態のが諦めつくわ」
「馬鹿かお前、そんな不謹慎な……」
四人組のうち若い二人がぼそぼそ言い合っている。あっちの方向は東になるらしい。ちなみに二人の片方、ダークブラウンの髪のお兄さんは、べたべたなわたしの毛を見かねたのか、さっきからハンカチでどうにかしようとしてくれている。……気持ちはありがたいんだけど、水なしで拭き取るのはちょっと無理じゃないかな。できればまずそのハンカチどこかで濡らしてきてからにしてほしい。気にかけてもらえるのは本当にありがたいんですけどね。
ところで、伝令が来たからってこんな街中全域にご報告しますな勢いでお知らせする必要あるの?
かーーん、かーーん、かーーーーん。三度続けて鐘の音。リレーだったこれまでとは違い、複数の方向から同時に聞こえてくる。
「――降りてくるぞ」
お兄さんが指さす方向にわたしも目を向ける。なんか指先めっちゃ上のほう向いてますね。伝令が来るんじゃなかった? 降りてくるって、なにが?
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