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「にゃあ」
ぶっちゃけにゃあにゃあ鳴くしかできず言葉での意思疎通が望めない身で知りたい情報を得ることは諦めてますけどね。
一応は主張しときます。加護ってなんですか?
「にゃーお」
自身の左手を前足でホールドして連続猫キックを放つわたしを、ジルドナート青年は右手で抑えようとする。ふふーん、そんな甘い対応ではターゲットが左手から右手に移行するだけなのですよ。
「にゃあ~」
「うん? これが気になるのか?」
今度は右手を抱え込んでべしべし猫パンチするわたしに、ジルドナート青年がそんなことを訊いてくる。
一瞬なにを訊かれてるのか理解できませんでしたねー。これって? なにが?
攻撃を止めてよくよく見れば、ジルドナート青年の右手の甲にはオリーブ色の紋様が浮かんでいる。丸い形の葉っぱと花びらのたくさんある小さな花、それを囲むように配置された細い蔓。
……これ、めちゃくちゃ見覚えある意匠だ。具体的にはヴェルゼン様の肌や衣装にあるやつ。両手の甲から腕までを覆うヴェルゼン様の紋様とは範囲が全然違うけど、描かれているものはまったく同じだと思う。
右手の甲の紋様はここにいる探索者らしい人たちほぼ全員が有していたはずだ。ただ、多いのはうにょーんぐにゃーんな流水っぽい紋様で、ジルドナート青年は少数派だ。ジルドナート青年の手にあるのがこんな紋様なのにはいま初めて気づいたけど、そういえばジルドナート青年、最初に出会ったときには腕から手の甲まで覆うような革製防具みたいなのを装備していたため、そもそも手の甲が見えていなかったような。見えなければ気づきようもないわけである。
「これはトーウィス゠ルアの徴なー。トーウィス゠ルアの加護があるって目印です」
わたしに手の甲がよく見えるようにして、ジルドナート青年はなにやら説明を始めた。
「トーウィス゠ルアの加護の効果は人から人へうつるような病に若干強くなるってやつらしいけど、まあ普通に生きてれば効果を実感する機会はそうそうないから有り難みはあまりないかなー」
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