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「うん? どういうこと? ウルーシュカの徴で魔法士向きかそうでないかを手っ取り早く知りたいんじゃないの?」
ジルドナート青年が首を傾げてミケちゃんと女の子を交互に見る。
わたしも訊きたい。どういうこと? 徴ってなんですか? それがあると適性が魔法職かどうかわかるの? なにそれ便利ー。
「ええと、お兄さんの話を聞いたの」
うーうーと不満を表明する犬みたいに唸るだけのミケちゃんに代わって、中学年相当組の女の子がジルドナート青年に説明する。
「俺の話?」
「そう。お兄さんがウルーシュカの迷宮に初めて入ったときの話」
「俺が初めてウルーシュカの迷宮に…………ああ、そういう……?」
女の子の言うことを復唱していたジルドナート青年は、途中でなにかに気づいたようだった。
「お兄さんはそのときはどの神様の加護もまだ貰ってなかったのに、ウルーシュカの迷宮に入ってもウルーシュカの加護の徴が出なかったんだって。そのあと迷宮を出てからトーウィス゠ルアの祠にお祈りしたらトーウィス゠ルアの徴が出て、それで他の神様に気に入られていた人だからウルーシュカの加護が貰えなかったのがわかったんだって聞いたの」
「あーそれかー……。ちなみに誰に聞いたんだそれ」
「レネリ先生!」
元気よく答える女の子の声を聞きながら、わたしはおチビちゃんとミケちゃんの手から逃れるべく身体を捩る。黙って撫でくり回されるのそろそろ限界です。
「ちょーっと細部が違うんだよなー……いやまあいいんだが。それで、ミケは加護を頂きたい神様がいるのか。すでに神様の側から目をかけられていれば、そんな人間にまで敢えて加護を与えるようなことはウルーシュカはしない。目当ての神からの徴が貰えそうかどうかをウルーシュカの迷宮で確認したかった?」
「うにゃあーん」
お話の途中で割り込んで恐縮なのですが、先ほどから話題の加護とか徴とかについて猫にも教えていただけませんでしょうか。そんな思いを込めて、ジルドナート青年の膝の上に移動してその左手に絡みつき猫パンチ猫キックを食らわせてみる。
「んー? どうしたー?」
「にゃあ! にぁうん!」
「いきなり元気になったなー。そういやこいつ名前なんていうのかオーリ様に聞くの忘れてた」
「にゃーん」
いや、いまオーリ君に聞いても林檎漬けとか言いそうなので、当面の間それは忘れたままで大丈夫です。
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